漢方ライフ読む(コラム一覧) > 不眠症と食習慣
公開日:2022.03.15 更新日:2022.03.153151view

不眠症と食習慣

眠りと漢方~眠れぬ夜のために vol.8

食積(しょくせき)は不眠の原因のひとつ
「食積(しょくせき)」という漢方用語があります。
食が積もる。面白い表現ですね。

意味はご想像通り、食べ物が胃腸に停滞し、消化できなくなっている状態のことです。
お腹が張って苦しい、胃もたれ、食欲不振、げっぷ、吐き気、口臭、お通じが軟便または便秘でスッキリ出ないなどの症状が特徴です。

この食積(しょくせき)が不眠症の原因になることは見過ごされがちです。

今回は、日々の飲食の摂り方と不眠症の関係についてお伝えします。

“食べ過ぎ“とは、量の問題だけではない
食積(しょくせき)の原因は当然ながら“食べ過ぎ”です。
ただ、不眠症の原因となる“食べ過ぎ”とは、人と比べて量が多いか少ないかという意味ではなく、自分にとって量が多いという意味です。

あきらかな暴飲暴食であれば容易に“食べ過ぎ”を自覚できますが、家族と同じ量を食べていてもその人にとっては多いということがあります。
本人に“食べ過ぎ”の自覚がないため、食積(しょくせき)が快眠を妨げていることに気づきにくいです。

また、食べる量が自分にとって適切だとしても、夕食と就寝の時刻が近すぎると、消化が進まず食積(しょくせき)となり、睡眠に影響します。

消化と睡眠は両立しにくい
眠りに関係の深いエネルギーは血(けつ)です。(コラム『眠りと漢方』vol.4
血(けつ)は、起きて活動していれば活動部位へ注がれ、横になって眠ると肝(かん)へ貯蔵されます。
血(けつ)が肝(かん)に貯蔵されることで眠ることができるといえます。

食事をすると胃腸に気血(きけつ)が集まることで消化吸収活動が営まれます。
食べ過ぎや食後すぐ横になるなどの状態では血(けつ)が肝(かん)に戻れず眠りが妨げられるのです。

慢性的な食積(しょくせき)になっていませんか?
快適な睡眠には食習慣、特に夕食の摂り方が影響します。
気づかずに食積(しょくせき)になっていないでしょうか?

それとわかる起床時の体調としては、胃腸がもたれている、お腹がすいていない、寝ているはずなのに朝から疲れている、身体が重だるい、舌の苔が厚いなどです。
*舌の見かたについては、コラム『舌は口ほどに物を言う』Vol.13をご参考に。

食習慣の改善で治る不眠症もある
食べ過ぎや夜遅い飲食は、寝つきが悪く、眠りが浅く、朝の目覚めもよくないなどの睡眠障害だけでなく、消化が不十分となるため翌日の胃もたれ、食欲不振といった胃腸の不調や全身のだるさも招きます。

不眠症で身体がだるいと訴える人の中には、睡眠の問題というより食習慣が原因だったケースもあるのです。

慢性的な食積(しょくせき)に心当たりのある人は、朝起きたときにお腹が空いている、あるいは胃腸のもたれがなく身体がスッキリしている状態を目安に夕食の時刻と量を調節してみましょう。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

漢方スクールでの担当コース・セミナーはこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

ページトップへ