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2019.10.20834view

「五臓六腑」という官僚がおさめる世界、人体!

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.8

人体で働く官僚たち。人体は自転車と同じ!

ある時、国をおさめている黄帝が岐伯にこんな質問をぶつけます。
「人の体内にある五臓六腑(ごぞうろっぷ)は、国で働いている役人たちのように思えるけれど、その役割はどのようになっているのかな?」
すると岐伯さん、「陛下!なんて良い質問をされるのでしょう!」と感激して答えます。

そもそも古代の中国では、人体を解剖学的にみるのではなく、それぞれの働きによって「五臓六腑」に該当させています。五臓は「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」の5つ、六腑は「胆(たん)」「小腸(しょうちょう)」「胃(い)」「大腸(だいちょう)」「膀胱(ぼうこう)」「三焦(さんしょう)」の6つです。

岐伯がどのように説明しているか、五臓についてみてみましょう。

 …「君主の官」
 皇帝に匹敵する存在で、人の精神活動を担う。
 心臓の拍動や血液循環で生命を維持し、物事を考えたり覚えたりする働きがあります。

 …「相傅(そうふ)の官」
 君主(皇帝)を補佐して政治を行う存在で、呼吸を担う。
 呼吸によって気を取り込み、心を助けて血流に乗せる働きがあります。

 …「将軍の官」
 将軍に匹敵する存在で、安定した精神状態を担う。
 気を巡らせ、血を貯蔵して、気分良くすごせるように心身を保つ働きがあります。

 …「倉廩(そうりん)の官」
 農林水産省のような存在で、飲食物の管理を担う。
 毎日食べる飲食物の消化・吸収を担って元気をつける働きがあります。

 …「左強(さきょう)の官」
 力強さを作る(左強)存在で、生命力を貯蔵して生殖や生長を担う。
 気力や体力、生命力などを蓄えて、足腰を強化する働きがあります。

人体が健康であるためには、五臓六腑のどれひとつ欠けてもいけません。
私は五臓六腑を自転車の部品のようだと思っています。タイヤ、ペダル、ハンドル、サドル、チェーン、それぞれに役割があり、どれかひとつが欠けても自転車として機能しないのです。

岐伯の教えに黄帝の心も晴れ晴れと!

岐伯はこの後、五臓六腑のどれが一番大切かということに触れています。
基本的には、君主である「心」がいきいきと元気であれば、他の官職も健全に自らの役職を果たせると考えます。だからこそ、「心」すなわち精神状態を安らかに保って養生することが大切です。
逆に、「心」の不調によって精神状態が不安定だと、他の臓腑にも悪影響がおよんで、肉体的にも不調が発生すると言っています。

何か心配ごとや悩みごとがあると、胸苦しく感じて夜眠れなくなったり、日中もボーっとして食欲が落ちて、逆に朝も起きられないようなことがありますね。「心」だけの問題ではなくなっていることがわかります。

人体の構造と機能は巧妙で、現代の科学をもってしても解明できていないことがたくさんあります。わからないことを嘆くよりも、今わかっていることを基準に発展させ、さまざまなことを推し測ることで人体の機能もわかるはずです。

岐伯は黄帝に「人体の変化は微妙で千差万別、極めようとしても困難です。けれど五臓六腑や陰陽の働きを熟知すれば、いかようにも応用して人体の機能と構造も極め得るはずです。」と伝えています。
これが「霊蘭秘典論篇第八」で、帝室図書館ともいうべき場所「霊蘭」に収めて永遠に伝えるべき重要な考え方だとしています。

ご自身の健康を考える時、「私の君主や将軍は元気に働いてくれているかな?」と見えない官僚たちに思いをはせてみてくださいね。

齋藤 友香理 - Yukari Saito
[ 薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。薬日本堂漢方スクール:http://www.kampo-school.com/

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