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2019.04.151776view

日々養生、薬膳茶の基本。「一番の薬膳茶は何?」

「薬食同源」から「薬膳」へ

私が担当してきました「薬膳ドリンク」のコラムは今回が最後になるため、あえて基本的なお話をします。

薬膳という言葉は「後漢書」(紀元430年頃)ではじめて使用されましたが、実際に薬膳という表記が頻繁に使われるようになったのは近代に入ってからです。
実際、中国の中医薬大学でも、「中医薬膳学」が選択科目になったのは2003年で、まだ20年も経っていません。
意外に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

薬膳のルーツは、中国の伝統医学から芽生え、様々な食材を用いる中で、空腹を満たすとともに、健康維持や病気の予防・治療にも役立つという「医食同源」「薬食同源」にあります。
一般の方の中には、「薬膳=生薬を使った料理」と思っている方もいらっしゃいますが、必ずしも生薬を使っているとは限りません。
生薬を使わず、日常でよく用いる食材だけで薬膳料理を作ることも可能なのです。

薬膳とは、中医基礎理論をベースに体質や症状、体調、季節などに合わせて作られる料理です。
そのため、例えば、滋養強壮に良いとされる高麗人参のスープは、気虚(エネルギー不足)の人にとっては薬になりますが、熱証(のぼせやほてりなど余分な熱がこっもっている状態)や肝陽上亢証(ストレスが多く、激しい頭痛や血圧が高い状態)にとっては毒になってしまうのです。

正しい知識を持ち、個人差に合わせて素材を用いることが大切で、むやみに、高麗人参やクコの実を用いることではないことはいうまでもありません。

薬膳茶で「食材以上、漢方薬未満」を目指す

薬膳茶とは、上記「薬膳」の考え方を踏まえて作られた飲み物のことで、中国では「薬茶」と呼ばれています。
花や葉、茎、根茎を使用したもの、木の実や果実、牛乳や穀物を使用したもの、茶葉や食薬を使用したものなど幅広く、箸やスプーンを使わずにそのまま飲めるものを「茶」としています。

薬膳茶を作る際によく用いるものとして「食薬」があります。
薬(漢方薬)に用いられる素材を「生薬(しょうやく)」や「中薬(ちゅうやく)←中国での呼び方」と呼ぶのに対し、食薬とは、生薬としても食材としても用いられる素材のことで、高麗人参やなつめ、クコの実などが代表的です。

食薬は茶葉と組み合わせることも出来ますし、単体で用いることもできます。
嬉しいのは、薬(漢方薬)には満たないまでも、食材以上の効果が期待できることです。長期続けることで、ジワジワ効果を感じるものもあれば、シナモンや生姜など即効性を得られるものもあります。

こうした食薬の多くは中国が原産のため、日本人には最近まで馴染みが薄かった薬膳茶ですが、日本には昔から飲まれている野草茶があります。
昔、生薬は高級で身分が高い人にしか手にすることはできなかったため、一般庶民は身近に生えている野草で健康を管理していました。今でも「おばあちゃんの知恵袋」として、吹き出物にはドクダミ茶、便秘にはハブ茶、イボにはハトムギ茶・・と受け継がれているものも多くあります。
こういった日本の民間療法も、用い方によって薬膳茶にすることができます。

同じように独自の民間療法として、韓国では、身近な野菜や果物、野花を用いた「伝統茶」が数多くあります。

中国・韓国・日本、共通点を持ちつつ、独自の習慣や文化の影響を受けて作られたお茶を比較するのも楽しいものです。

一番の薬膳茶は「白湯」!?

私の著書で薬日本堂監修の本に『ちょい足し薬膳ドリンク』があります。おかげさまで、先日4回目の増版がありました。
当初は、本格的な薬膳茶のレシピ本を企画しておりましたが、「これでは一般の方は難しい」と出版社からダメ出しされ、どの家庭にも余っているような茶葉を使って、食薬をプラスする今の形になりました。

手軽さを優先したレシピ本になっておりますので、ぜひ活用してみてください。
本来のお茶の飲み方でいうと、花や葉・茎など抽出しやすい素材はティーポットにお湯を注ぐ形で十分ですが、
なつめや高麗人参など果実や根茎は水からしっかり煮込んだ方が薬効が抽出されやすいのでおすすめです。

私自身、体調に合わせて茶葉や食薬を合わせた薬膳茶はよく飲みますが、ここ数ヶ月一番のお気に入りは白湯です。白湯とは、水から沸かしたお湯を飲みやすい熱さに冷ましたものですが、どんな高級な薬膳茶よりも一番良いのではないかと密かに思っています。

我が家では朝起きたらまず、やかんでお湯を沸かすことから一日がはじまります。
沸騰したら弱火で20分沸かし、カップに注ぎ、冷めるまで待ち、一杯ほどの白湯をゆっくり飲みます。
沸かしている時間はもったいないので、足湯をして血流を促しています。

きちんと沸騰させた白湯は、水道水とは思えない甘味とまろやかさでとっても美味しいのです。
これを朝一に飲むことで、腸が動き便通も良くなりましたし、体温も上がってきました。
胃への負担もないので、胃腸が弱い方も安心して飲めます。

これまで、セミナーや書籍、雑誌などでたくさん薬膳茶レシピを提供してきましたが、白湯こそが身体に一番優しい飲み物ではないかと思っております。

約1年間、薬膳ドリンクのコラムを読んで下さった皆様、ありがとうございました。
現在、漢方スクールの薬膳ドリンクレッスンはお休み中ですが、再開した際はぜひご参加下さいね。

小林 香里 - Kaori Kobayashi
[ 国際中医師,国際中医薬膳師,登録販売者 ]
20代の頃、過労とストレスで身体をこわしたことをきっかけに、北京中医大学日本校にて中医学や薬膳を学び始める。2005年、薬日本堂(株)に入社。店舗での漢方相談をはじめ、取材対応や薬膳レシピ監修、漢方スクール講師を務める。2017年10月退社の後、目黒区自由が丘に漢方薬店と鍼灸院を併設する漢方・鍼灸「和氣香風」を設立。自店にて漢方相談を行う傍ら、薬日本堂漢方スクールでも講師として活動。
漢方鍼灸和氣香風HP: kakikofu.com
小林香里個人ブログ: kaori-kampo.seesaa.net
インスタグラム  : kaori_kampo

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