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公開日:2020.07.20 更新日:2020.07.2010739view

五労~日常生活5つの過労が身体を傷つける!?

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.17

古代人からのヒント、五行配当

古代の中国人は、自然の営みからさまざまな法則を見出しました。その中のひとつが五行です。五行配当については、「季節の風と体調不良~五行配当の不思議」(vol.5)でご紹介しました。
私たちの身体は「五臓六腑という官僚がおさめる世界」(vol.8)として、肝心脾肺腎が連携して生命の営みがあります。五行のつながりがみえると、五臓の不調で起こる症状なども表現されているので、対策を練ることもできます。

五行
五臓
五色
五根
五液
(よだれ)

(はなみず)
五体血脈肌肉皮毛

土の縦列でわかるのは、脾(消化吸収のはたらき)が弱ると、顔色が黄色くくすみ、涎があふれやすく、口元に不調があらわれて、肌肉(肉体)が痩せたり緩んだりするということです。

五臓と関連するさまざまな不調

おもしろいところでは、五病(ごびょう)といって、五臓の不調によって口から出てくるものという表現もあります。肝が病むと語が出る、つまりよくしゃべります。心が病むとゲップ、脾が病むとすっぱいものや苦い味があがります。肺が病めば咳が出て、腎が病むとあくびが出るというのです。どうでしょう、心当たりはありますか?
 
精神的にも不調があらわれます。肝の気は上がって怒りやすく、心の気は緩んで喜びやすくなります。脾の気は詰まって、くよくよ思い悩みやすくなり、肺の不調では悲しみやすく、腎の不調では恐れやすくなります。腎が弱っている時に、お化け屋敷はお勧めできませんね。

日常生活5つの過労

生活習慣が身体に不調をもたらすことは、生活習慣病という病名を知る皆さんがイメージできるものだと思います。古代の人々も、日常生活の過労が身体に及ぼす影響について、五労(ごろう)として表現しています。

久しく歩くと筋を傷る(やぶる=傷つける)
久しく視ると血を傷る
久しく坐ると肉を傷る
久しく臥すと気を傷る
久しく立つと骨を傷る

長時間歩き続けたらどうなるでしょう?当日は疲労で重だるくなり、夜、足がつるかもしれません。
さらに翌日になると筋肉が張って筋肉痛があらわれます。

パソコンやスマホ、読書で細かい字などを長時間視続けたらどうでしょう?
夕方や夜中、目は乾き、ゴロゴロとして痛み、かすんできませんか?
視力は身体を構成する血によって栄養と潤いが送られています。
血は思考や精神活動にも栄養を送るので、夜更かしをすると、翌朝、ボーっとして思考が回らないなどということもあります。

長時間坐り続けた時、どのような不調が出ますか?
まずはお尻が痛くなりますね。
他の動きが減ってしまうので、筋肉も痩せてきてしまいます。これが「久しく坐ると肉を傷る」ということです。
 
長い期間、横たわって寝たきりではどうでしょう?
気分は滅入り、起き上がる気力もわかなくなります。深い呼吸で気を取り込むこともしづらくなります。

逆に長時間立ち続けたら、足腰、関節などに負担がかかります。
立ち仕事の途中で腰をたたきたくなること、よくありますね。

このように、同じ動作をし続けることも不調の原因になるとわかっていれば、どんなときにも休憩が必要だということに気づけます。日常生活の注意点として、活用しましょう!


齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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