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2016.12.01392view
ベビーの健やかな成長を願って-小児推拿

中医の玉手箱(5)

私が通っていた上海中医薬大学は、毎年夏休みに1か月の病院実習がありました。5年生に進級する年の夏休みは、自分の専門分野を決めるために自由に実習先を選んで良いとのことでしたので、「小児推拿(しょうにすいな)科」の実習に行くことにしました。

「小児推拿科」とは文字通り子供向けの推拿(マッサージ)治療を行うセクション。

日本の「ベビーマッサージ」は、赤ちゃんとママのスキンシップや、マッサージをすることで血行を促し免疫力を高めることが目的ですが、中医学の小児推拿は専門家による治療が中心ですが、さらに健康増進の目的でも行われます。
主に、生後3か月くらいの赤ちゃんから6歳ぐらいの子供たち、ほとんどが首にある胸鎖乳突筋のしこりが原因の「筋性斜頚」の赤ちゃんたちが来ていましたが、他にも夜泣きする、おっぱいをあまり飲まないなどの赤ちゃんや、虚弱体質で食の細いちびっ子たちもたくさん。

私は「子供とお母さんの健康に貢献する」ことを志して中医学を学び始めましたが「どうやったらそれができるのだろう?」とずっと考えていました。小児推拿の存在を知り「子供の病気を治し、健康増進にも役に立つなんてすごいじゃないか!これなら志を実現できるかも!」と考えて実習に行くことにしたのです。

小児推拿の実習に来てみたら、子供独自のツボやマッサージの方法にびっくり。大人と同じ部位や名称のツボもありますが、五臓に対応するのが5本の指だったり、腕の内側の面を使ったり。体が小さいので、最初はこわごわ揉んだり撫でたりしていましたが、だんだん力加減がわかってきます。

3日に一度やってくる、食が細くてお腹が弱い子供たちは、先生がおしゃべりしながら、おへその周りをぐるぐるとマッサージし、同時に私たちが、脾の経絡が通るとされている親指の指紋の側をこするようにマッサージ。
他にも足三里などのツボも揉みながら30分ほどで終了し帰っていきます。また、熱があるときには、腕の内側を手首のしわの真ん中から肘まで、同じ方向にリズミカルにシュッシュッとこすりあげます。
早いときには20分ぐらいで熱が下がった子供もいたのだとか。

ボディはゆっくりと一定のリズムでマッサージしますが、指や腕に関しては「速度が命」。
私たちも、すばやく指を動かすための技術が必要になりますし、子供の柔らかな皮膚を傷つけないように、ベビーパウダーやオイルを使います。こちらの病院では、指先や腕をマッサージするときには、エタノールに細葱と生姜のスライスを浸けこんでアルコール分を揮発させたものを使っていました。

小児推拿をしている子供とそうでない子供を比較して、日頃から小児推拿をしている子供の方が発育状況がよいという報道もあり、斜頚の治療が終わってからも、元気に育つようにと毎週通っていた赤ちゃんもました。
先生と子供たちの上海語の会話に必死でついていきながら、小さな手を揉んでいるとみな我が子のように可愛くて、「元気に育てよ~」と心の中で願わずにいられませんでした。あの時来ていたベビーたちも小学生になっているのでしょう。日本に帰ってきて、身近に小さな子供がいるとその小さな手を揉みたくなってしまう私なのです。

原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。
家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。

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