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公開日:2016.02.01 更新日:2020.05.2214553view

排尿トラブル(頻尿)と心のつながり ~清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

知っておこう!漢方薬の意外な力 vol.9

不安があると不眠だけでなく頻尿が起こることをご存知ですか?
今回は頻尿に利用される漢方薬をご紹介しましょう。

冬、寒いとトイレが近くなりますね。
排尿トラブルというと、頻尿や残尿感など誰もが経験する症状や、尿失禁や膀胱炎、排尿困難など特定の時に起こるものなどさまざまです。多くの方は、腎臓や膀胱にトラブルがあると考えるでしょう。事実、漢方でもそのようにとらえます。

五行配当表というものをご存知ですか?自然界にある5つの要素が互いに関連していることを示す表で、さまざまなヒントがつまっています。

五行
五臓
五腑小腸大腸膀胱
五季土用
五気湿

これによれば腎は水の性質を持ち、膀胱と協力して体内の水分代謝を担っていると考えます。寒い冬に排尿トラブルが起こることも、この表からわかります。腰痛や冷えになりやすい高齢の方や、寒がりで冷え性の女性が頻尿になるのも納得がいきます。

では不安など心の状態が頻尿につながるとはどういうことなのでしょう?
あるお客様から次のようなご相談を受けたことがあります。

「25歳の姪が急に頻尿になって、母親から困っていると相談された。日中はひどいと30分おきにトイレに行き、夜は1~2時間おきにトイレに起きて休めていないよう。今までこれといった病気をしたこともなく、病院でも泌尿器に異常はないと言われたらしい。」

「姪御さんは最近、環境や心境の大きな変化はありませんでしたか?」と尋ねたところ、実はお父様が急逝されてその四十九日を終えた頃から症状が出ているということがわかりました。

実はこのような時、漢方薬で腎や膀胱に直接アプローチしても改善はみられません。全く関係ないようにみえる心にアプローチするのです。心身は互いに協力したり、コントロールしてベストな状態を保っています。先に出てきた五行・五臓も同じです。

この方の場合、お父様が急逝されたことで大きな不安が心に生じてしまいました。この不安は火として身体を傷めていきます。この傷は腎にもおよびます。火が強すぎて水が蒸発し、うまく巡らなくなってしまったと考えるのです。

このような時に効果を発揮するのが清心蓮子飲(せいしんれんしいん)という漢方薬です。「清心」とは「心に生じた火をさます」ということです。「蓮子」とはハスの実のこと。ハスの実は薬膳でもよく不眠や不安がある時に食されます。

姪御さんは清心蓮子飲を2週間ほど服用しました。心に生じた火が小さくなれば水がしっかり巡るようになるので、悩まされている頻尿も解消して眠れるようにもなったそうです。

自分が感じている以上に身体は正直です。身体が教えてくれるサインを見逃さずに適切対処したいですね。

次回は、漢方の処方名と季節・方角のつながりをご紹介します。

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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