- 劉 梅 – Mei Ryu[中医師]
中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。
心と向き合い集中力を高める気功、「打座」の方法
劉梅先生の気功のおはなし②
前回は「打座」のやり方を簡単に話しましたが、今回は詳しくご紹介します。
少林武術で有名な中国の少林寺をご存じの方は多いと思います。
僧たちの強く素早い動きの理由に「座禅(打座)」の修行があります。
僧たちは、毎日座禅の修行をすることにより、静と動の陰陽バランスを習得し、かつ、
恐れない、闘わない、動じない、怒らない、という安定した精神力も手に入れることができるように
なります。これを「禅武合一」といい、武術だけではなく、心も一緒に鍛えるということです。
では、早速、「打座」のやり方を説明しましょう。
①両脚を組んで、あぐらをかいて座る。(椅子に座っても大丈夫)
②両手を重ね、女性は右手(男性は左手)を自分の丹田(たんでん*)の場所 に合わせる。
③頭部の百会(ひゃくえ)を上に向ける。天から吊られているイメージ。
④呼吸は鼻から息を吸い、丹田に溜め、吐くときも鼻から吐くようにする。
・吸う時も吐く時もなるべく細く長く深くするように心がける。
・腹部は、吸う時に膨らみ、吐く時に収縮するように。
・呼吸は自然に、無理のないように自分のペースで行う。
*丹田(たんでん)おへそのやや下、お腹の中にある。(丹田の位置は流派によって異なる)
この方法を用いると、意識を集中させやすくなります。
この後は、「どうやって意識を集中させるのか」、その方法についてお話ししましょう。
― 意識を集中するために ―
「意守丹田」
「意」は簡単にいいますと、意念、思いのことです。
目や耳、脳を全て丹田に集中することによって、意識の集中ができる方法です。
①目は軽く閉じて、丹田を見るイメージをする。
②耳はすましてお腹(丹田)の呼吸を聞くようにする。
③頭も丹田に集中し、何か思い(雑念)が出てきたら、それにすぐ答えるようにする。
ここで「思い(雑念)に答える」について説明をします。
前回「気功をする際に最も難しいのは意識の集中」と書きました。
打座をしている時、様々な思いが出て来ませんか?なかなか集中できませんね。そんな時どうするか?
例えば「これから何を食べようか?」と思いが出て来たら、「よし、煮込みうどんにしよう!」と
自分に答えるとこの思いが消えます。一度消えても「明日やる○○の作業は嫌だな~」と出て来たら
「でも、Aさんがいるから何となるさ!」とそれに答えると、その思いは消えます。
このように繰り返していくと、段々苦痛なく自分に集中することができるようになります。
まずは最初から完璧を求めず、自分とじっくり向き合っていきましょう。
それでは、何故意識を集中させる必要があるのでしょうか?
身体の「気血水(津液)」(身体の栄養素)は安静な時に作られています。
睡眠中、または何にも考えずに自分に集中している時などです。
そんな時は、心も休ませるので、頭がすっきりします。
今の時代、見るもの聞くもの、楽しい情報がたくさんありますね。
人間は好奇心が旺盛なので、ついつい見たり聞いたりしてしまい、その結果、疲れてしまいます。
もう一方で、現代社会は競争が激しく、人間関係が複雑になっています。
さまざまなものに対する不安もいっぱいです。
着るものがあり、食べ物もお腹いっぱいあって、住む場所もあるのに満足しない現代人。
ものが豊かな社会になってきた反面、心の所在は分からなくなり、自殺者は増え続け、
調査によると地震や津波等の自然災害で亡くなられた方よりも多いとのこと。
「打座」は心を休ませるのに最もふさわしい気功です。
不健康で長生きするのはツライものです。
悩みや欲望を無くすことはできませんが、減らすことはできます。
まずは、心を休ませる時間を作りましょう。
そして、自分の健康は自分で守ること。
場所や時間を問わずに行えますから、毎日5分でもよいので、まずは「やり続ける」ことが大事です。
ところで、現代人の呼吸の回数は古代人の約2倍だそうです。いったい何故でしょう?
次回は、呼吸法についてお話しをしたいと思います。
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