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公開日:2024.03.21 2618view

全身の水の滞りを解消する〜五苓散 

漢方薬のつぶやき vol.17

水分代謝を整えることで知られている漢方薬、五苓散(ごれいさん)。
むくみだけでなく、めまいや頭痛、下痢、吐き気、二日酔いまで、全身の症状に幅広く使われています。

これらの症状は水滞(すいたい)と呼ばれる、いわゆる水分代謝不良が原因で起こる症状です。

五苓散が頭部、胸腹部、四肢と広範囲に作用して水分代謝を整えることができるのは、構成生薬の絶妙な配合によるものと思います。

まず、水分代謝が整うとはどういうことなのか、次に五苓散の作用についてお伝えします。

水分代謝は2つの意味を含む
水(すい)と表現していますが、2つ意味があります。
栄養となる水と、停滞する不要な水です。

ですから、水の動きにも2つあります。

ひとつは、
栄養である水を体の各部位へ送る。これによって全身に潤いが与えられます。
もうひとつは、
不要になった水を回収して、尿や汗として排出する。これにより、水の停滞を防ぎます。

前者の働きが不調のときに起こるわかりやすい症状は、咽の渇きです。

後者の働きが不調だと、瞼や手脚がむくむ、体が重だるい、鼻水が多い、関節がこわばる、吐き気、便がゆるい、めまい、乗り物酔いなど、水滞の症状が起こります。

むくみと咽の渇きが同時に起こる理由
「水分代謝不良」というと、水が停滞すること、として捉えられますが、全身の水の動きは連動していますので、同時に栄養である水を体の各部位へ送ることも妨げられています。

つまり水滞では、栄養である水が行き渡らず、不要な水は停滞するという2つのことが同時に起こります。

「むくみがあるのに咽が渇くのはなぜか?」
という質問をスクールの生徒さんからよく受けます。
その答えがここにあります。

水分代謝に関わる3つの臓
栄養である水を体の各部位へ送り、不要な水を排出する。
この一連の水分代謝を担っている内臓は、脾(ひ)・肺・腎です。

脾は飲食物を消化吸収して、栄養となる水をつくりだし、肺へ送ります。
肺は、水を全身に分配して潤いを与えたり、発汗により水を排出します。
肺から腎に水が降りていき、腎が不要な水を尿として排泄します。

脾・肺・腎の連携によって、栄養となる水が体内に行き渡り、不要な水は排泄され、水分代謝が整います。

五苓散の絶妙な生薬構成
では、五苓散はどのように水の滞りを解消するのでしょう。

五苓散は5つの生薬から構成されています。
生薬の効能を3臓の連携と絡めてみると、
白朮(びゃくじゅつ)が脾をサポートして水を動かし、桂枝(けいし)は肺に働きかけて水を体内に行き渡らせるとともに、発汗を促す。茯苓(ぶくりょう)・猪苓(ちょれい)・沢瀉(たくしゃ)は停滞する水を集めて、腎の働きによって尿として排泄します。

五苓散は水分代謝の要である脾・肺・腎に働きかけることで、全身の水の滞りを解消するとともに、栄養となる水が体内に行き渡るように作用します。

最後に五苓散を適切に服用するためのポイントと注意点です。
適用症状である、むくみ、めまい、頭痛、下痢、吐き気、二日酔いなどに、「咽の渇き」と「尿量の減少」を伴っていることを確認してください。
五苓散は利水作用といって、水を排出する効果のある漢方薬ですので、長期での服用は避けましょう。


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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