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公開日:2022.02.25 更新日:2022.02.257272view

不眠症の漢方薬②~漢方薬の種類と特徴

眠りと漢方~眠れぬ夜のために vol.7

ドラッグストアで見かける、不眠症の漢方薬
5人に一人、60歳以上では約3人に一人が睡眠に悩む現代。
これだけ身近にある悩みですから、身近な存在のドラッグストアにも不眠症の漢方薬を見つけることができます。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
加味逍遥散(かみしょうようさん)
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
加味帰脾湯(かみきひとう)

これらは不眠症にも使われる漢方薬です。
ほかにもたくさんありますが、今回は代表的かつドラッグストアで見かける漢方薬の種類と特徴を紹介します。

漢方薬は病名では決まらない
先ほど挙げた漢方薬の中で、加味逍遥散(かみしょうようさん)は広く知られている漢方薬のひとつですね。
加味逍遥散(かみしょうようさん)は婦人科で使う漢方薬では?と疑問に思った人もいるかもしれません。

そこが漢方の面白いところ。
薬は病名で決まるのではなく、症状・体質・原因などによって決まります。
加味逍遥散(かみしょうようさん)は「婦人科の薬」というわけではなく、婦人科の不調によく使われているだけなのです。

ですから、ひとことで「不眠症の漢方薬」といっても、症状・体質・原因によって用いる漢方薬が異なります。

不眠のタイプとしてこれまで2つのタイプをお伝えしました。
●「気が高ぶって眠れない」タイプ(『眠りと漢方』vol.2
●「眠いのに眠れない」タイプ(『眠りと漢方』vol.4

冒頭で挙げた漢方薬はどちらのタイプに使われるのかみてみましょう。

「気が高ぶって眠れない」タイプの漢方薬
興奮や緊張といった精神・情緒の乱れによって、目が冴えて眠れない、眠くならない、夜なのに気が鎮まらないタイプです。

原因は気の滞りと熱の発生。
漢方薬は気を巡らせるとともに、こもった熱を冷まし精神を鎮静させる種類が使われます。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)が代表です。
ストレスが強く、気分が鬱々とする。イライラ、のぼせ、頭痛、肩こり、便秘などを伴う不眠に使われます。

前者は比較的体力のある人向けです。
後者はそれより虚弱で疲れやすく、ストレスによって食欲不振や胃もたれを感じるような人に。
女性なら月経不順や月経痛の悩みもあるかもしれません。

「眠いのに眠れない」タイプの漢方薬
気力や体力といったエネルギーが消耗して、疲れているのに眠れない、寝つきが悪い、夢が多い、眠りが浅いタイプです。

原因は体と心の栄養である血(けつ)の消耗。
血(けつ)を補い生み出すとともに、不安定になった精神を安定させる漢方薬が使われます。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)が代表です。
虚弱で疲れやすく、貧血気味、動悸、めまい、物忘れなどを伴う不眠に使われます。
疲れは身体的というより精神的な疲労で、それゆえに不安感が強く、神経過敏になります。

前者は血(けつ)不足の不眠症では有名な漢方薬でさまざまな商品名で見かけます。
後者は血(けつ)だけでなく気(き)も不足しているタイプ。
普段から胃腸が弱く、食が細い、軟便気味。心配性で考え込みやすい傾向があります。

このように漢方薬は不眠のタイプや体調・体質に合うものを服用することで、身体の陰陽バランスが整いその人にとっての自然な眠りが回復していきます。
漢方薬を服用する場合は専門の人に相談して自分に合ったものを服用しましょう。

そして、不眠症改善にはまずは養生、その上で薬にサポートしてもらうという姿勢を忘れずに。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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