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2020.06.041767view

漢方で見る感染症対策vol 12 神秘湯と小柴胡湯

新型コロナウイルスをはじめとした感染症についてお伝えする「漢方で見る感染症対策」シリーズは今回が12回目となりました。8回目までは感染症の予防、歴史、処方選びに欠かせない弁証について、9回目以降は、感染症の初期に用いられる漢方薬である「麻黄湯、麻杏甘石湯、銀翹散、藿香正気散、小青竜湯、五苓散」について、その横顔と使い方を紹介してきました。
今回は、薬日本堂漢方スクールの劉梅講師が感染症中期に用いられることの多い「神秘湯(しんぴとう)」「小柴胡湯(しょうさいことう)」を紹介します。

神秘湯~実は日本生まれの処方
もともとの処方は、今から約1200年前の唐の時代に王焘(おうとう)によって編纂された医学書『外台秘要(げだいひよう)』第9巻に記載されており、これが日本でアレンジされて「神秘湯」と名付けられました。

生薬の構成:麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、厚朴(こうぼく)、陳皮(ちんぴ)、柴胡(さいこ)、蘇葉(そよう)、甘草(かんぞう)

生薬の組合せの特徴と生薬それぞれのはたらき:
①麻黄・杏仁・甘草は、それぞれ咳止め効果があります。三薬を合わせるとより効き目が強くなり、喘息も緩和されます。

麻黄:止咳効果以外に、呼吸の苦しさを解消します。これを「宣肺」といいます。

杏仁:肺を潤し、痰を切れやすくします。

②柴胡・厚朴・陳皮・蘇葉は、それぞれ香りの良い生薬で、息苦しさや呼吸困難を改善します。

柴胡:熱を冷まして、邪気を発散させます。

陳皮:痰を切れやすくします。

甘草:止咳効果の他に、諸薬を調和し、痰を切れやすくします。

臨床応用:原典では“療久咳奔喘、坐臥不得、並喉裏呀声気絶方”と書かれており、少し慢性化した喘息、咳嗽や、痰が少なく、息苦しさがあり呼吸困難のため横になれない時に使います。

現代医学への応用:気管支炎、肺炎、気管支喘息など。


小青竜湯や麻杏甘石湯の使い方と比べてみよう

●小青竜湯との使い分け
小青竜湯も咳や喘息に使えますが、小青竜湯は透明な痰、痰の量が多い時に使います。

●麻杏甘石湯との使い分け
麻杏甘石湯も咳や喘息に使えますが、麻杏甘石湯は発症の初期で発熱が強い時に使います。

咳や喘息の場合は、大量の痰や過度の呼吸により陰液(体液)が消耗されるので、咳が改善された後は、麦門冬湯や人参養栄湯などを使うと肺の修復に役に立ちます(この二つの処方の使い方は最終回で紹介します)。

小柴胡湯~幅広い応用範囲

こちらも『傷寒論』の中の名処方の一つです。

構成:柴胡(さいこ)、黄芩(おうごん)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)半夏(はんげ)

組み合わせの特徴と各生薬のはたらき:
①柴胡と黄芩の組み合わせがこの処方の中心となります。熱を冷ます、発熱、心煩、口が苦い、口渇などの症状を改善します。

柴胡:熱を冷まし、邪気を発散させます。

黄芩:肺(呼吸器、鼻や気管支、肺を含む)の熱を冷まします。発熱、口が苦い、口渇の解消に良いです。

②半夏と生姜の組み合わせは吐き気、悪心、消化不良に良いです。

半夏:下に下げる働きがあり、咳や吐き気などの「上がってくる」症状に良いです。

生姜:体を温め、吐き気を止める良薬です。

③人参・甘草・大棗は元気を補います。この三薬の組み合わせによって回復力を高めることができます。

臨床応用:
かぜや感染症の中間期、発熱と寒気が交互にあらわれる時(熱はあるが寒気がない、寒気はあるが熱はない)、胸や両脇が重苦しい、気持ちが落ち着かない、口が苦い、食欲不振、吐き気、口が苦い、のどが乾く、めまいなどに使います。

現代医学への応用:
上記のような症状を伴うかぜ、インフルエンザや肺炎、肝炎、胆嚢炎、膵臓炎、胃腸炎などのような感染症、月経期間の微熱、更年期障害、自律神経失調症などに幅広く使えます。


次回は山吹講師による清肺湯と辛夷清肺湯の紹介です。ぜひご覧ください。

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劉 梅 –リュウ・メイ
劉 梅 –リュウ・メイ
[中医師 ・薬日本堂漢方スクール専任講師]
中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。薬局勤務の傍ら漢方相談員の指導・育成に参加、TV・雑誌でも活躍する。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。

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