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公開日:2019.06.20 更新日:2020.05.187925view

あなたを守る衛気(えき)~陽気が作るバリアの働き

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.4

「生気通天(せいきつうてん)」~生命は自然界の陰陽に通じている

人はなぜ元気でいられるのか、逆に病気や死に至るのか…
そんな素朴な疑問に対して黄帝内経素問 第三篇「生気通天論」では、「生命は天、いわゆる自然界の気、陰陽の働きに通じている」と説いています。
前回の【vol.3 「春夏秋冬の法則に従って、聖人・賢人として生きる」】で四季のリズムに沿って生きることが大切だと学びました。春夏秋冬、四季のリズムを作っているのが陰陽の働きです。

特に陽気は太陽のような存在で、正常に運行していれば世界も人体も平和で、逆に異常があれば大変なことが起きます。

太陽が支える人体のバリア

イメージしてみましょう。
朝起きて窓を開けたら太陽が昇っています。あたたかく、心地よく、思いっきり伸びをして深呼吸したくなりますね。植物も動物もすべて太陽の恩恵を受けています。
人体の外にあって、太陽のようにあなたを守る陽気のバリア、これを衛気(えき)と言います。

衛気は太陽の動きと連動しているといっても過言ではありません。
夜明けになると衛気は身体の表面を巡り始めます。しっかり体表を守らせるために、朝起きてから日光を浴びることはとても大切です。そして日中は、太陽の力も借りているので身体の防衛力も強いと考えられます。
夕方、日が陰ってくると陽気が少なくなってきます。その動きに合わせて衛気は毛穴を閉じ、体内に潜ってしまいます。日が暮れてからも肉体労働で過労したり、夜の冷たい空気にさらしていると、段々身体がむしばまれて病気になってしまうのです。

ここから一日の過ごし方のヒントが得られます。
朝、目覚めたら窓を開けて太陽の光とあたたかさを感じましょう。まずは深呼吸。新鮮な空気を吸うために外に出て散歩したり、ヨガや太極拳、ラジオ体操などで身体を動かしてみましょう。これで衛気が発動します。
夕方から夜、肌を直接外気にさらさないよう衣類に気をつけましょう。体内に蓄えている力を外にもらさないよう、ゆったりと過ごすことが大切です。
ぜひご自身の生活も見直してみてください。

日常に潜む陽気の敵

体表を守る衛気は、陽気に不具合があるとうまく機能してくれません。
例えば寒さ。冷たい空気に遭遇すると、陽気は体内に深く潜ってしまい体表を守れなくなります。ぞわぞわと鳥肌がたつような状態は、衛気のバリアが破られたサインと考えられます。

暑すぎるとどうでしょう。体内の熱を発散させようとして汗をかきますが、この時に陽気も体表からもれてしまいます。汗のかきすぎでバリアの働きが弱まるので、危険なのです。
逆に暑い時に汗をかけずに熱が体内にこもってしまうと、熱中症のような意識朦朧した状態になってしまいます。

梅雨のような湿気が多い時、陽気は湿気に絡まれて身動きがとれなくなってしまいます。汗はべたついて表面にとどまり、頭も重くどんよりします。身体を動かす筋肉も伸び縮みしづらくなり、しびれや痛みが生じるのです。

あなたを守るバリアをしっかり働かせるためにも、身体の声に耳を傾けて過ごしましょう。

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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