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公開日:2019.03.20 更新日:2020.05.183352view

健康長寿の秘訣~自然の流れに逆らわず生きる

黄帝と一緒に『素問』を学ぶ vol.1

生きる知恵が満載の『素問』

遠古時代、人は人体の機能や活動、自然とのつながりをどのように理解したのでしょう。
そのヒントになるのが、紀元前から伝わる中国医学の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』です。この本は2つの内容が盛り込まれており、「陰陽五行」という自然哲学に則った医学の基礎理論を『素問(そもん)』、鍼灸による治療を『霊枢(れいすう)』にあらわしています。

これから始まる「黄帝と一緒に『素問』を学ぶ」シリーズでは、『素問』を読み解いて、現代に生きる私たちの健康に役立てたいと考えています。一緒に古典の世界を旅しましょう!

『素問』は当時の帝である黄帝(こうてい)と、その師である岐伯(きはく)との問答という形で記されています。
黄帝は中国の『史記』にも出てくる伝説の皇帝たち、三皇五帝の一人です。この方、とてもかしこかったようで、「生まれた時から神のごとく、赤ん坊の時から言葉を理解した」と書かれています。さらに成長して聡明な帝になったばかりか、「ついには天に登る」、つまり仙人になったと伝わっています。

長生きできるのはなぜ?

『素問』の冒頭、上古天真論(じょうこてんしんろん)で黄帝は次のように問います。
「大昔の人は100歳を越えても元気だったと聞くけれど、今は50歳でもう老衰しているね。なぜだろう?」
それに対する岐伯の答えはこうです。
「大昔、生き方の道理を知る人は、自然界の陰陽の法に則って、季節に調和した生活を送っていました。飲食にも節度をもち、規則正しい生活を心がけて心身を疲労させなかったので、心身ともに充実し100年の寿命を全うできたのです。」

陰陽の法とは自然界のバランスです。
一日をみると、太陽が昇り、人が活動する日中と、太陽が沈み、人が休息をとる夜とが繰り返します。同様に一年をみても、明るく暖かい日差しがあふれ、動植物の活動に満ちた春夏と、日差しが陰り、冷たい空気に動植物が活動をひそめる秋冬の繰り返しがあります。

このリズムに従って生きること、日々規則正しく寝起きすることで、活動と休息のリズムが整う。それが健康長寿の秘訣だと伝えてくれているのです。

私たちの生活は豊かで便利になりました。ですが、健康長寿の法則「いの一番」でもある自然のリズムに則した規則正しい生活をしている人はどれだけいるでしょう。情報が世界中を瞬時に駆け巡り、生活様式も多様な現代、そのスピードに翻弄されてはいないでしょうか。

水の流れのように無理せず生きる

岐伯は続けてこうも言っています。
「病の元凶である邪(じゃ)を避けられないわけではありません。心静かに穏やかに過ごし、むやみな欲望を起こさなければ、生命力である真気(しんき)が満ちて巡り、心身ともに充実して体内を守るので病にならないのです。」

これを読み解くと、無理して頑張りすぎるから病になると言っているように思えます。

人は日々の糧を得ようと働きます。少しでもよい暮らしをしたいと欲し頑張る。人に頼られて人のために頑張る。さらに自分の夢のために頑張る。どれも悪いことではないけれど、自分自身の健康を害してまで頑張る必要があるのでしょうか。

これは少し乱暴な言い方かもしれません。ですが、自分が元気でなければ周りの方々を元気にすることもできません。まずは自分が元気でいるために、ひとつ生活のリズムを整える。起床時間を決めて朝日をたっぷり浴びる。その日のうちに床に入って休む。間食を控えてお腹の休息時間を作るなど、やれることからでよいのです。

水が上から下に流れるようにゆったりと構え、昼夜、四季の法則に逆らわずに生きてみる。
気持ちをあらたにしやすい春だからこそ、生活リズムを見直したいですね。

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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