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公開日:2019.03.05 更新日:2020.05.184030view

同じものだけではつまらない、全て違うから面白い!

鍼灸雑話その14

同じものだけではつまらない、全て違うから面白い!

イチゴショートケーキを見た時に、まず何を感じ、考えますか?
「おいしそう!」と思う人もいれば、調理法を考える人、イチゴの生産地がどこかを考える人、あるいは見た目の芸術性が気になる人もいるでしょう。
このように、ひとつの物を見た場合、それぞれの立場や視点によって評価や感想が異なります。
しかし、ショートケーキそのものは変わりません。

これと同じく、東西の医学は、人や病を見る視点が違うだけで、同じ人を見ていることに何ら違いはありません。
西洋医学には西洋医学の、漢方医学には漢方医学の視点、身体が存在し、そこには明確な理論、科学が存在しています。

鍼の効果を、現代科学から100%理解出来たとしても、それはあくまでも現代の視点から見たものでしかありません。「氣」を「素粒子」だという人もいますが、それも強引です。
間違いではないでしょうが、それでは理解が足りません。そもそもが「違うもの」だからです。

私たちは、生まれた時から現代の視点、理論を身につけているので、そもそも古典医学である漢方医学を正しく理解するのは困難です。
私は兵庫から東京に引っ越して来ましたが、同じ日本でもこんなに違うんか!と驚き、だからこそ面白いと感じています。

鍼で体を調える話

数年前、目の奥が刃物で刺されたように痛む「群発性頭痛」に悩む男性が来ました。
激痛のため、まともに車の運転もできないほどで、病院の治療や痛み止め、鍼も効かなかったそうです。
「上実下虚(じょうじつげきょ)」という「下半身の力が不足しているため、上部に症状があらわれた」状態なので、「上半身の症状は下半身で取る」という一つの原則に従い、足先とお腹に鍼をして終えました。
施術後はあまり頭痛に悩まされず帰宅し、その後は漢方薬も服用して徐々に回復し、今も元気に暮らしています。

最近の話では、「慢性上咽頭炎」と診断され、顔面部や後頭部の激痛、全身の関節痛、諸々の自律神経症状に悩む方が来られました。やはり痛み止めが効かず、数分に一度起きる激痛がつらいそうです。
この場合も、上半身には触れず、足先と下腹部を中心に鍼術を施し、1時間ほど寝てもらいました。
施術後は、体もスッキリした!と笑って帰られ、その数時間後のメールでは、まだ激痛は出ていないとのことでした。

慢性上咽頭炎が治ったわけでは無いので、また痛みは再発するでしょう。
しかし、体のバランスを調えていけば、症状は変わっていく可能性があることを知ってもらえたかと思います。
だからといって、鍼が一番に優れている訳ではありません。出来ないものは出来ないのです。

ただ、病院で「難病だ」「治療法が無い」と言われても、視点を変えれば道はあるものです。
鍼もその道の一つです。

「恬淡虚無(てんたんきょむ)」を目指そう!

人は常に外の世界に影響され、振り回されて生きています。
そうしてストレスを感じ、疲弊し、様々な問題を起こします。

ある医師が、「検査結果で一喜一憂しないでね!大して変わらなくても落ち込まず、良くなっていても浮かれずに!」と私の家族に言い、私はとても感銘を受けました。

黄帝内経に『恬淡虚無 真気従之 精神内守 病安従来』とあります。
「何事にも執着せず心静かであれば、気は自ら巡り、病は自然と癒えていくだろう」という教えです。

太平洋、大西洋、インド洋、色々名前はあっても海は海。医学に古今東西それぞれ違いはあるけれど、ただ目の前の「人」を診るのみ。学べるものは学び、視点を増やし、やがて何事にもこだわらない「恬淡虚無」を目指したいですね!

さて、話したいことはまだまだありますが、今回で私の「鍼灸雑話」は終了です。
もし鍼灸に興味を持ってくださる方がいれば、薬日本堂漢方スクールで開催される「お灸レッスン」や、自由が丘の「漢方鍼灸 和氣香風」へお越しください。
一年間、どうもありがとうございました。

山本 浩士
山本 浩士 - Hiroshi Yamamoto

鍼灸師(厚生労働大臣免許・国家資格) 兵庫県西宮市出身。

幼少より武術修行を始め、師より医武同源の考えを教わり、武術と医術の両立を志す。

高校卒業後、大阪のアクションチームに所属し、映像や舞台などで仕事をする。

2009年、はり師・きゅう師の国家資格を取得し、地元兵庫県西宮市で「はり灸楊鍼堂」を開院。千葉の恩師から、参禅や滝行の修行を通して伝統医術を学ぶ。また、数名の先生から江戸時代の鍼術や道家気功鍼などを学び、難病や慢性疾患に対する臨床経験を多く積む。2015年に東京へ移転。2016年から、ポーランドやイタリアで鍼灸、気功、武術、導引按腹の出張講義を開始。2017年11月から、自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風」を妻とともに開業。

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