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2018.09.052064view
ノドの不調は腕・肩に灸?!かすれ声をお灸で治した話

鍼灸雑話 その8

ノドを痛めた役者たち

皆さんは、「油小路事件」をご存知ですか?

慶応三年(1867年)冬の京都。
新撰組から離党した、伊東甲子太郎を筆頭とする御陵衛士たち。
彼らの行動を快く思わない近藤勇たちは、伊東甲子太郎を酒宴に招き、その帰り道、大石鍬次郎ら数名の隊士に襲わせ暗殺し、遺体を七条油小路に放置。そうして、遺体を引き取りにきた御陵衛士たちを待ち伏せ粛正したという事件。

この事件を題材にした「油小路の八人」という舞台(演劇集団よろずや公演)で、私は武術・殺陣指導をしていました。2010年1月末、大阪でのことです。

公演も終盤になると、ノドを痛め、声の出にくくなる役者が出てきます。

声帯を酷使し、声がかすれることを嗄声(させい)といいます。
いわゆる「しわがれ声」「かすれ声」のことです。

嗄声は、声帯をコントロールしている反回神経が麻痺することでも生じます。
例えば、甲状腺の手術をした後遺症で、反回神経麻痺が生じ、嗄声になることもあるのです。

リハーサルを終えたあと、少しでも嗄声を改善させられないか?
そう考えていた時、思い出したのが、お灸名人と呼ばれた深谷伊三郎(ふかやいさぶろう)先生の書物でした。

嗄声にはお灸が効く

「嗄声・謡人結節には臂臑(ひじゅ)の多壮灸が著効あり」
書にはこうあります。
臂臑とは、手陽明大腸経(てようめいだいちょうけい)にあるツボです。
専門的に書くと「肩ぐうの下三寸、三角筋の前縁」、画像にあるような上腕二頭筋(力こぶ)の前方外側に臂臑はあります。

深谷先生は、臂臑にお灸をたくさん据え(これを多壮灸と言います)、多くの嗄声・ポリープの治療されたそうです。

そんなことを思いながら、ノドがつらいと言っていた役者を舞台袖に呼び、椅子に座らせ臂臑穴へお灸をしました。
大事なことは、「圧痛点」を見つけ、そこにお灸をすることです。
臂臑穴付近をさぐると小さなシコリ(硬結)があり、押さえると「痛!」と言います。
そこへ、米粒大に固めた艾(もぐさ)をのせて線香で火をつけ、燃え切る前に指で消します。
これを30回ほど繰り返した頃、声を出させると「あ!声が出しやすい!!」と。

その様子を見ていた役者たちにも「やってほしい!」と頼まれ、みんなに灸治をしました。

ノドの問題を、肩のツボで治療する。鍼灸の面白さはこういうところにあります。
市販の手軽な貼るタイプのお灸でも効果が出ることは実証していますので、お悩みの方は試してください。


漢方薬なら「響声破笛丸」や「麦門冬湯」が嗄声に効果的です。
妻と自由が丘で開業してから「臂臑の灸+響声破笛丸」の組合わせで良い効果を得ています。

実践で知る、お灸をする時のポイント

ここで、深谷先生の教えの一部をピックアップしてみます。

・経穴は効くものではなく、効かすものである
・書にある経穴部位は方角を示すのみ
・経穴は移動する
・そこが悪いからと、そこへ据えても効果はない
・名穴を駆使して効果をあげよ

薬日本堂漢方スクール品川校、大阪校でお灸レッスンも行っていますので、興味ある方はご参加ください。
実際にお灸を据えることで、体のつながりがみえてくるでしょう。


余談ですが、古代中国には死者を蘇らせる反魂(はんごん)の法があったといいます。
生薬に関する書物『本草綱目(ほんぞうこうもく)』にはこうあります。
「西海聚窟州にある反魂樹。この樹は楓、柏に似た花と葉をもち、その香は百里先でも聞け、その根を煮た汁で練ったものを反魂という。豆粒ほど量を焚くと、死した者でさえ蘇る」

油小路で戦っていた新撰組と御陵衛士たちは、何者かの策謀により伝説の反魂香を嗅がされ・・・・
という内容の舞台で、私がはじめて嗄声治療をした現場でした。
ではまた来月!

山本浩士 - Hiroshi Yamamoto
鍼灸師(厚生労働大臣免許・国家資格) 兵庫県西宮市出身。
幼少より武術修行を始め、師より医武同源の考えを教わり、武術と医術の両立を志す。
高校卒業後、大阪のアクションチームに所属し、映像や舞台などで仕事をする。
2009年、はり師・きゅう師の国家資格を取得し、地元兵庫県西宮市で「はり灸楊鍼堂」を開院。千葉の恩師から、参禅や滝行の修行を通して伝統医術を学ぶ。また、数名の先生から江戸時代の鍼術や道家気功鍼などを学び、難病や慢性疾患に対する臨床経験を多く積む。2015年に東京へ移転。2016年から、ポーランドやイタリアで鍼灸、気功、武術、導引按腹の出張講義を開始。2017年11月から、自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風」を妻とともに開業。

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