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2018.07.201746view
見えないものも見る、つながりを重視する ~ 整体観念

気の省エネ生活 vol.13

中医学は古代哲学から生まれ宇宙観・自然観が根底にある医学と言われます。
太陽や月の動き、日照時間や気温の変化、植物が発芽して生長し、枯れ落ちた葉は土に帰る。絶え間なく変化と循環を繰り返し、すべてはつながっていて、個々の出来事が全体に波及する。
このような自然の法則を含む中医学の特徴のひとつに「整体観念」があります。

見えない“つながり”があることを知ると気持ちも楽になる

私は「整体観念」を説明するときにまず次の一言で簡単に伝えます。
“つながり“を重視する考え方です。

きちんと説明すると次のようになります。
身体は全体でひとつです。五臓六腑は独立したものではなく、各器官・組織はそれぞれに役割分担がありますが、互いに密接に関係して協調し依存し合っています。
さらに、自然と人もひとつです。私たちの身体は気候や地理環境から影響を受けるため、外界との統一性も大切です。

人の身体、そして自然と人の関係において、「統一性」、「協調性」、「連携」を重視して、部分だけではなく全体を捉えましょうという考え方です。

整体観念をもつと、原因不明の症状に不安を抱き心配したり悩み過ぎることが減ります。
例えば、頭痛、冷え、むくみ、倦怠感、肩こり、痛み、下痢、不眠、イライラ、月経不順などの体調不良があるけれど健康診断の結果はすべて異常なし。病院で調べてもはっきりした原因がわからないと不安になります。自律神経失調症という診断が出ることもあります。
臓腑・器官それぞれは異常がないのに体調が良くないということは、個々の問題ではなく相互のの連携、つまり“つながり”が上手くいっていないのかもしれません。

整体観念は身体の機能や発病の仕組み、そして養生においてとても大切で役に立つ考え方です。

前回(vol.12)、深くゆっくりと静かなリズムで呼吸することは全身に栄養を行き渡らせ、五臓六腑の協調性や心身の統一性を整えるとお伝えしました。
呼吸をつかさどる肺と他の臓腑とのつながり、呼吸が日常生活の活動にどうつながるのか見てみましょう。

肺は“ふいご“で消化を助ける
~五臓六腑の協調性


肺は心(しん)と連携して気血を全身に巡らせています。私は夏至の前後一か月程の期間、たびたび不整脈が起こるのですが、このとき呼吸が浅くなり息苦しさも感じます。血(けつ)の巡りと呼吸とは一体です。そして呼吸が浅くなると食事にも影響が出ます。食べものが飲み込みづらくなるため、美味しさが半減して食事がおっくうになります。
ある先生が面白い話をしていました。
「飲食物を消化吸収・排泄するということは、栄養物と不要物を分別することですから陽の力が必要です。例えば物質を燃焼させて変化させていくようなイメージで捉えると、燃焼には酸素が必要で、酸素を送り込むのが呼吸という機能です。肺は消化吸収の過程においては “ふいご“のような役割をします。」
見えない“つながり”を見ようとする中医学の姿勢があらわれた面白い解釈だと思います。

ため息は無意識の深呼吸
~心身の統一性


気には流れがあり肺は肝と協力して気の流れを調節します。イライラしたときや、緊張しているときにため息をつくことがありますね。ため息は気の滞りを解消するための無意識の深呼吸とも言えます。
肝は気を巡らせ感情・情緒面をコントロールしています。イライラしているときは肝の気が上がり過ぎている状態ですが、このとき深く呼吸することは上がり過ぎた気を下げる役割があります。
肺と肝の連携により気が昇ることと降りることの陰陽バランスをとっています。

常に変化しながらバランスをとっている
~自然と人との統一性


肺は呼吸以外に皮膚を管理して発汗の調節をしており、また肺の状態は鼻にあらわれます。これらの機能は季節や気候の変化に反応し自然とのバランスを保とうとします。
冬、皮膚の毛穴はギュッと引き締まり寒気の侵入を防いでいますが、立春を過ぎると体表面は徐々に緩み外気を敏感に感じやすくなります。春、気温の割に寒く感じるのはこのためです。
春から夏にかけては身体が緩んで毛穴は開き、発汗することで暑さをしのぎ体温を調節します。秋には再び身体は引き締まり外気の侵入を防いで冬の寒さに備えていきます。
体内の余分な水分は主に尿と汗から排出されます。体内にたまった余分な水分を夏は汗として排出できますが、毛穴が閉じていく秋は汗が出にくくなるため余分な水分があれば鼻から排出することがあります。秋に鼻水が出やすいのはこういった理由もあるわけです。秋の鼻水も整体観念で捉えると納得します。

身体内部のつながりや自然と人のつながりを知ることで今まで見えなかったものが見えてきます。「整体観念」(”つながり“を重視する考え方)を、身体の機能を理解するときに、体調不良の原因を考えるときに、そして四季に順応した養生を実践するときに役立てていきたいと思います。

飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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