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2018.04.052654view
同じようで少し違う、漢方薬と鍼灸の世界

鍼灸雑話 その3

知識のルーツを探す旅

作家の寺山修司は、『書を捨てよ、町へ出よう』という戯曲を書きました。本を読んでわかることは、本を読めば良くて、本に書かれていない事にこそ、真実が隠されているかも知れません。

鍼灸と漢方薬は、どちらも「陰陽」「五行」といった理論を利用しますが、全く同じか?といえばそうではありません。
関西の鍼灸学校で教鞭をとられていたある老中医に「授業で中医鍼灸論を学びましたが、実際の臨床はどうですか?」と私の友人が聞きました。すると老中医は「あれは授業用。臨床では、そんなことしませんよ」と笑って言われたそうです。

火のないところに煙は立たずと言い、隙間のないところに風は入り込まないと言います。
言語、文字、理論、技術、道具、これらは煙に似ています。 前回「象」の話をしましたが、それと同じです。
その風はどこから来て、火種は誰が作ったのでしょう?

映画の字幕や吹替は、翻訳されているため、本来の意味合いからズレることがあります。古典医学も、長い歴史の中で改編や翻訳をされてきたため、最初に意図して作られたものと全く同じとは言えません。
伝言ゲームのように間違って伝わるだけならまだしも、わざと隠して伝えられることも少なくありません。だからこそ、それを解読して真実を探していくことに面白味があると言えます。

知識と理論を得たら、まずは町へ旅に出てみましょう!

病位と病性

病気になった理由がわかれば、理論に従って治療法を組み立て、処方薬が決まります。
これが「理・法・方・薬」と呼ばれる漢方薬の治療体系です。
鍼灸の場合は「理・法・方・穴・術」となります。前半は漢方薬と同じですが、後半が異なります。

私は妻と自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風(かきこうふう)」を開院しました。
同じ患者さんを、漢方薬と鍼灸の両方からアプローチするのですが、「弁証」をする時、つまり「その人の状態を診て判断する時」にその違いを痛感します。
例えば「脾虚(ひきょ)」と言っても、その意味合いがやや異なるのです。

漢方薬は、生薬の性質を利用するため、病気の状態や性質を細かく分析していきます。
鍼灸でも弁証はするのですが、漢方薬程の細かい弁証は必要ありません。 病気がどの部位、どの深さにあるのか、強さや勢いはどうか、どこから発生した病気なのか、という病位の判断が出来れば、あとは自分の感覚と技術で施術をします。

黄帝内経に「補瀉の時、針を以ってこれを為す」とあるように、補瀉、つまり「不足しているところを補うのか、詰まっているものを巡らせるのか」は術者がその技術を以って行うのです。

意を以って治と為す

お灸や経絡の講座をしていると「○○の時にはどのツボが効きますか?」という質問をよく頂きます。答えを言えば「どこでも良いから、ご自身が気になる場所にやってください」ということです。古典には「痛を以って兪と為す」とあります。つまり「押して痛む部位がツボ!」なのです。
巷には「◯◯にはこのツボ」といった情報が溢れています。それは間違いではありません。しかし、必ず自分の目と耳、身体の感覚、直感で判断することが重要です。

鍼灸の世界には「ツボは効かせるものであって、効くものではない」という言葉があります。
武術の場合、流派や技が強いわけではなく、それを使う人の力量で全て変わります。これと同じことです。

例えば足三里(あしさんり)というツボは、胃腸を温めることもあれば、熱を取ることもあります。それは術者の目的で変えられるのです。
そのため、鍼を持つ姿勢、構え、呼吸、意識状態など、効かせるための身体、鍼医の身体が必須になります。
こういう点が、漢方薬と鍼灸のちょっとした違いです。

もし、自分や家族の「ツボを押す」「お灸をする」場合は、「治る!」「元気になる!」と心で念じながらやってください。これも、施術をする上での大切な口伝、ポイントのひとつです。

山本浩士 - Hiroshi Yamamoto
鍼灸師(厚生労働大臣免許・国家資格) 兵庫県西宮市出身。
幼少より武術修行を始め、師より医武同源の考えを教わり、武術と医術の両立を志す。
高校卒業後、大阪のアクションチームに所属し、映像や舞台などで仕事をする。
2009年、はり師・きゅう師の国家資格を取得し、地元兵庫県西宮市で「はり灸楊鍼堂」を開院。千葉の恩師から、参禅や滝行の修行を通して伝統医術を学ぶ。また、数名の先生から江戸時代の鍼術や道家気功鍼などを学び、難病や慢性疾患に対する臨床経験を多く積む。2015年に東京へ移転。2016年から、ポーランドやイタリアで鍼灸、気功、武術、導引按腹の出張講義を開始。2017年11月から、自由が丘で「漢方鍼灸 和氣香風」を妻とともに開業。

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