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公開日:2026.01.21 更新日:2026.01.2197view

急な腹痛や下痢に心強い~桂枝加芍薬湯

漢方薬のつぶやき vol.39

処置を誤ったときの漢方薬!?
2000年くらい前に書かれた傷寒論(しょうかんろん)に収載されている処方、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)。傷寒論によると本来は、「カゼをひいたときに治し方を間違って、邪気が体内に入り込んだため、腹が張ってシクシク痛む」状態に服用する漢方薬です。

処置を間違ってしまった場合にそれを治すための漢方薬がある、というのは興味深いですね。そして現代でも腹痛、膨満感、下痢などの症状に活用されています。

今回は、お家に常備しておくと心強い漢方薬、桂枝加芍薬湯をご紹介します。

配合生薬は同じなのに効能が異なる?
カゼといえば、桂枝湯(けいしとう)という有名な漢方薬があります。実は、桂枝加芍薬湯と桂枝湯は配合生薬の種類が全く同じなのです!

どちらの処方も、桂枝(けいし)、芍薬、大棗(たいそう)、甘草、生姜(しょうきょう)の5つで構成されています。ですが、効能は異なります。

◇桂枝湯の効能
「体力虚弱で汗がでるものの次の諸症:カゼの初期」

◇桂枝加芍薬湯の効能
「腹部膨満感のあるものの次の諸症:しぶり腹、腹痛、下痢、便秘」

配合生薬が同じにもかかわらず、効能が異なるのは不思議ですね。
理由は生薬の分量にあります。とくに重要なのは、芍薬の量。桂枝加芍薬湯の芍薬は桂枝湯の倍量になっています。

芍薬2倍で薬効が体内へ
人がカゼをひいたとき、外から襲ってくる風寒の邪気が体内に侵入しないように、体表で防衛します。ですからカゼに使われる桂枝湯は主に体表に作用する漢方薬です。

ところが、芍薬を2倍量にした桂枝加芍薬湯では働きかける部位が、体表ではなく体内に移ります。とくに腹部に作用し胃腸を温めたり痙攣を鎮めるなどして痛みを軽減、そして胃腸機能を回復します。

配合されている生薬の種類は同じなのに、分量を変えることで作用する部位が変化するとは!植物の薬効とそれを活用する漢方の理論には驚きです。

急なお腹のトラブルに
ということで、桂枝加芍薬湯は次のような場面で役立ちます。
・急に起こるひきつるような腹痛
・腹部のシクシクとして気になる鈍痛
・お腹が張るような感じ
・腸がゴロゴロ鳴る
・軟便や下痢

原因は冷たい飲食による冷え、よく噛まないことや消化しにくいものを食べたときの消化不良、緊張やストレスによるものです。
また、原因がはっきりわからなくても、普段から胃腸虚弱で軟便傾向の人が、腹痛や軽い膨満を感じるときにも活用できます。

さらに、本来は「カゼをひいたときに邪気が体内に入り込み、腹が張ってシクシク痛む」場面で服用する漢方薬ですので、お腹のカゼや、カゼで胃腸機能が低下したことによる腹痛・食欲不振・軟便にも用いることができます。

注意点として、桂枝加芍薬湯は温める処方ですので、全身やお腹が冷えている傾向のときに適用します。

配合生薬の芍薬と甘草の組合せは、いわゆる鎮痛・鎮痙作用をもち、急迫した症状を緩和する効果があります。ですから急に起こった腹痛や下痢にも比較的速く効果があらわれるので、いざというときに心強い漢方薬です。

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飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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