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2016.10.01529view
中秋節の月餅は蓮の実あんで-蓮は丸ごと漢方薬

中医の玉手箱③

旧暦8月15日は秋の真ん中を意味する「中秋節」。日本でも「中秋の名月」と呼ばれるお月見の日ですね。空気の澄んだ秋の夜空に浮かぶ月のきれいなこと!満月の丸いお月様は「円満」「団らん」のしるしとされ、遠方にいる家族が里帰りし、親戚も集まって食事をしたり酒を酌み交わしたり、楽しいひと時を過ごします。韓国も「秋夕(チュソク)」と呼ばれる祖先を祭る日で、連休となるため一時帰国するクラスメートもいました。

さて、中秋節につきものなのは「月餅」です。日本のものとは違い、塩漬けにしたアヒルの卵黄をあんの中に入れて満月に見立てる「広東式」が有名ですが、他の地方にはクルミなどのナッツ類が入ったものもあります。小豆あん、黒ゴマあん、蓮の実あんなど、あんの種類も様々です。先日私も香港で蓮の実あん、卵入りのものを買ってみました。卵の部分は塩漬けになって水分が抜けているので、もそもそした触感のものが多いのですがこちらの月餅はなかなか美味しい!蓮の実あんもあっさりと上品な味わいでした。月餅が入っている缶もオシャレ~。

蓮は実だけでなく葉や茎なども漢方の生薬、食材としても使われています。初夏に美しい花を咲かせた後、夏から秋は実をつける季節。上海にいた頃、花托と呼ばれる緑色の部分に実が入ったままの蓮の実が路上で売られているのを友達が買っていました。花托から実を取り出して食用や薬用に。精神を安定させたり滋養のはたらきがあります。実には緑色の小さな芽(蓮心)がついていて、これがとても苦い!知らずに食べてしまって驚きました。苦いものは身体の熱をさますはたらきがあるのでイライラや口の渇き、不眠などの生薬として使われています。

葉や茎の部分は夏の暑さによる熱をさますはたらきがあります。葉を乾燥させてお茶にしたものを調べていたら「美人のお茶」と出てきました!体内の余分な水を出すはたらきがあるからかしら!?乾燥させた葉にもち米やその他の具材を包んで蒸し上げる蓮葉飯も有名です。蓮の花はいい香りがするので、海外ではお茶を注ぎ込んで香りを移して楽しむのだとか。

一番身近な「蓮」といえば、れんこんではないでしょうか。生薬名は「藕節(ぐうせつ)」、止血のはたらきがあります。今の時期に食べれば、夏に疲れた脾を元気にし、秋に乾燥する肺を潤してくれるれんこん、これからどんどん取り入れたい食材です。れんこんのしぼり汁にも潤すはたらきがあり、のどの痛みによいと言われていますが、二日酔いにもよいのだそう。栄養学的にも薬膳的にも身体にいいことがぎっしりのれんこん、今日の帰りに買って帰らなくちゃ!
月餅から蓮のはたらきについての話題になりましたが、自然を意識して暮らしていると、旬の食材は必然の存在のような気がしてきます。季節の移り変わりを感じながら、その場所、その季節のエネルギーに満ちた食材をいただくことで、これからも健康に過ごしていきたいものです。

原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。
家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。

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