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2016.08.15364view
夏こそ治療!「冬病夏治」と「三伏貼」

中医の玉手箱(2)

漢方ライフ読者の皆さん、こんにちは。いよいよ夏本番、すっかり暑くなってきましたね!この季節は冬にかかりやすい病気の治療の時期であり、「冬病夏治(トンビンシァジ)」といわれています。「冬の病気を夏に治療する」とは、いったいどんなことなのでしょう?

この「冬病夏治」の治療方法の一つとして上海で行われるのが「三伏貼(サンフーティエ)」。暑くなり始める前から、市内の病院やクリニックの入り口に「三伏貼の季節です!只今予約受付中!」の看板が登場します。三伏って何?聞きなれない言葉ですが、日本でも「三伏の候」という暑中見舞いの挨拶にもなっています。三伏の「伏」は「降伏」の「伏」。夏至以降の三回目、四回目、立秋以降の最初のそれぞれの「庚(かのえ)の日」をそれぞれ「初伏」、「中伏」、「末伏」と呼びます。今年は初伏が7月17日、中伏が7月27日、末伏が8月16日となっており、毎年違います。一年の中で一番暑い期間にあたります。

この時期になぜ冬の病を治療するのでしょうか?中医学では、夏は自然界の陽のエネルギーが強くなる季節であり、自然界の一部である人体の陽のエネルギーも強くなって、気血の流れが旺盛になると考えます。冬になると、虚弱で風邪をひきやすい、胃腸が弱い人、慢性の呼吸器疾患の人などは、陽のエネルギーが弱いことが原因であるとして、夏の暑い時期に陽のエネルギーを補って、冬に病気にならない身体づくりをすることを目的としています。

さて、何を「貼る」のでしょうか。一般的には生姜(しょうきょう)や細(さい)辛(しん)など、温めるはたらきをもつ生薬数種類を粉にしたものに水分などを加えて泥状に練り、それを500円玉ぐらいの大きさに丸く伸ばしたものを背中あるいはお腹側のツボに、丸いばんそうこうを使って貼り付けていきます。配合内容は病院ごとに「企業秘密」とのこと。貼ってから3時間経ったら剥がす、皮膚にトラブルが出たらすぐ中止する、三伏貼をしている期間中は辛いものや油もの、生ものなどを食べてはいけないなどの約束事があります。初伏、中伏、末伏の期間内に1回ずつ、合計3回貼ったら今年の三伏貼は終了。これを3年続けると効果が倍増すると言われています。ちょうど夏休みの時期にあたるので、私が実習に行っていた病院では、ちびっ子専用の「冬病夏治」の外来がありました。

ただし、三伏貼は、身体を温め、皮膚を刺激しますので、熱のあるときや、喘息の発作のあるときなど、あるいは2歳以下の幼児や妊婦は行わないことになっています。我が家では、三伏貼をしてから3時間以上が経過しても剥がさず、半日すぎてから慌てて剥がしたら、皮膚が赤くなって水泡ができていました。温めるはたらきがかなり強いことを実感(実証?)しました。

この三伏貼、上海だけの習慣かと思っていたら、台湾でも盛んに行われているようですし、香港では病院やクリニックで「三伏天灸」と書かれた看板を見かけました。いずれの場所でも、中医学の考え方にもとづいて生薬の粉末を練ったものを貼るだけでなく、お灸なども組み合わせて「冬病夏治」に取り組んでいます。
 
私達は、生薬を用意して粉砕し、練って貼りつけるのは難しそうなので、お灸などで温めて、冬になると体調を崩しやすい、あるいは症状が出やすい方は、冬に病気にかからない身体を夏のうちから準備したいですね。

原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。
家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。

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