漢方ライフ読む(コラム一覧) > 頭痛にも、しもやけにも効く漢方 ~当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
公開日:2016.01.01 更新日:2023.07.1810391view

頭痛にも、しもやけにも効く漢方 ~当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

知っておこう!漢方薬の意外な力 vol.8

冬になると寒さによる不調が増えますね。その不調は人によってあらわれ方が違います。
今回は冷えによるさまざまな不調に効果がある漢方薬をご紹介しましょう。

不調の原因になる寒さ=寒邪
漢方では季節ごとに体調不良を起こす原因について考えます。これは漢方のバイブルであり、紀元前200年頃にはまとめあげられた古典『黄帝内経(こうていだいけい)』にも書かれています。

季節土用
季節の邪気風邪熱邪湿邪燥邪寒邪


冬に不調を起こす寒さを寒邪(かんじゃ)といいます。寒邪には2つの特徴があります。
ひとつは冷やす性質。寒邪を受けるととにかく寒く感じます。手足、お腹、腰などが冷えます。寒いと分泌液や排泄物(鼻水・痰・尿・おりものなど)がサラサラで薄く透明になり、たくさんあふれるという傾向があります。寒いところで鼻水がツーッと流れたり、寒い日にトイレが近くなるのはこのためです。

ふたつめは流れが止まり、縮こまる性質。寒いと縮こまって動きが鈍ります。筋肉が縮こまれば手足が動きにくくなりますし、足がつるなどの症状も起こります。血管も収縮して血行不良が起こります。手足指の血行が悪くなれば、あかぎれやしもやけなども起こります。いちばん酷い血行不良は凍傷です。

不通則痛
漢方には「不通則痛(ふつうそくつう)」という原則があります。気血のめぐりが悪くなると痛みの原因になります。寒さで肩こり、腰痛、関節痛が悪化する方は多いようです。それ以外にも腹痛、生理痛の悪化も多発します。冷えによる痛みは頭痛としてもあらわれます。かき氷を食べて頭がキーンと痛くなるのは、急激に冷えて気血がめぐりにくくなるからなのですよ。外気温が低くなった時に頭痛がする人は、耳当てや帽子などでケアしましょう。

あたためる生薬のオンパレード!
冬になると手足の末端が冷えてしもやけになり、しかも頭痛に悩まされて起き上がるのがつらいというお客様の相談を受けたことがあります。指先はジンジン痛くなり、手袋をしてもしもやけが出来るし、帽子とマフラーで頑丈に防備しても仕事帰りは頭痛が酷く、鎮痛剤も効かないというのですが、その時に用いたのが当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)です。

この処方は寒邪の攻撃を受け気血の通りが悪くなって起こる痛みによく使われます。長い名前の漢方薬ですが、9つの生薬<当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、桂皮(けいひ)、木通(もくつう)、細辛(さいしん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、呉茱萸(ごしゅゆ)、生姜(しょうきょう)>で構成されています。
生姜と桂皮は食材のショウガとシナモンのことで、お腹を温めます。木通はあけびのつるを乾燥させたもので、血や水のめぐりをよくしてくれます。細辛は気血の通り道である経絡をあたためて冷えを取り除きます。名前にも入っている呉茱萸は体側面をあたためて流れをよくする特徴があるので、頭痛や脇腹、手足側面の痛みに効果的です。

実はこの漢方薬、えらく飲みにくいのですが、このお客様は頑張って毎日服用してくれました。その結果、飲み始めて一か月の中で、少しずつ頭痛の強さが弱くなっていき、青紫色だった指先がほんのりピンク色になったのを見た時は、すごいなあと感じたものです。

この冬、末端の冷えや頭痛が気になったら、帽子やマフラー、手袋以外にも、手浴や足浴とこの漢方薬を思い出してみてください。

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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