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2015.09.01340view
『養生俳諧』~おばあちゃんの知恵を歌にしてみたら?

古典DE養生 第4巻

 私の出身地は宮城県で、中心部からはずれた“ど”が付くほどの田舎で育ちました。小さい時の家はトイレやお風呂が「離れ」にあり、すごく怖かった記憶があります。

玄関先には“ホウズキ”が置いてあり、トイレの周りには“ドクダミ”が生い茂っていました。“ホウズキ”は中の実をつぶしておでこにつけると熱さましに、“ドクダミ”は虫除けになるから植えていたのだと最近になって知ることに・・。

つまりそれらは、天然の「冷えピタ」と「虫コナーズ」ではないですか!?昔の人はちゃんと知っていたのですね。まさに、おばあちゃんの知恵!

 健康術を後世に伝える手段として、歌や俳句、物語といった形が取られ、次第に庶民に根づいていきます。それをいち早く取り入れたのは、室町時代後期から安土桃山時代を生き抜き、88歳の長寿を全うした名医、曲直瀬道三(まなせどうざん)です。その著書である『養生俳諧』(ようじょうはいかい)は、戦国時代に書かれたものでありながら、おばあちゃんの知恵としてこれからも伝えていきたい内容ばかりです。

「百人一首」を詠みあげて覚えるように、声に出してみることも健康法になると思います。
『養生俳諧』全120首の中から選りすぐりをご紹介しましょう。

食はただよくやわらぎてあたたかに
      たらわぬ程はくすりにもます


訳)食物はやわらかくして、温かいうちに足らない程度にほどほどに食べれば薬を飲む以上に効果的だ。
  胃を良好なまま保つことが健康長寿の秘訣!これを保胃といいます。


酒とても酔わぬ程にて愁いさり
      心をのべたし気にかようなり


訳)酒はほろ酔い加減の程度でたしなめば、不安や悩みを消し去って、気分転換になり身体によい。
  酒は百薬の長!気を巡らせる酒はストレスにいいです。飲みすぎず適量を守ることがポイントですね。

水上(みなかみ)のつばきをはかぬ玉の緒は
      つづきて老のうるおいとなる


訳)唾液を吐かずに飲み込んでいると、長生きでき年をとっても老化しない。(玉の緒=命)
  唾液は不老の液!「痰は吐け、唾液は飲み込め」という養生の原則です。


蛙(かわず)ふみ盃(さかずき)の蛇をあやしみて
      心せむるはおのがうたがい


訳)蛙を踏んだのを、蛇を踏んだのでないかと思い込む。見当違いで、いつまでも自分を責めて
  自己嫌悪に陥るのはおろかなことだ。
「盃の蛇」は、中国の故事「杯中の蛇影」によるもの。壁にかけた弓が盃の酒に蛇のように映って見えて、蛇を飲み込んだと思い込み病気になった。蛇影の理由を聞いて、たちまち治ったという話です。いつの時代も、疑心暗鬼、とりこし苦労はあるようですね。


身を思う心のただちなべて世を
      めぐみすつうやあがる代の道


訳)自分自身の健康に気を配り、規則正しい生活を心がけるという心もちが、ひいては世も明るくする。
  皆が心豊かな世界であれば争いも起こらないと私も思います。



他にも、日常生活の教えから生き方まで、俳諧の中にいろいろと表現されています。健康・養生は決して一過性のブームではありません。心身の健康に役立つこの素晴らしい知恵を、私達自身がしっかりと後世に語り伝えていきたいものです。

鈴木 養平 - Youhei Suzuki
[ 薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年宮城県生まれ。東北薬科大学卒業薬学部卒業後、薬日本堂入社。臨床を経験し、店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”とセミナー講師・雑誌・本の監修(『おうちでできる漢方ごはん』『かんたん・おいしい薬膳レシピ』)で活躍中。薬日本堂漢方スクール:http://www.kampo-school.com/

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