- 飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。
目やのどの痒みをともなう花粉症
漢方薬のつぶやき vol.41
鼻水だけでなく粘膜の痒みも!
くしゃみ、とめどなく流れ出る鼻水。春の花粉症は日常生活においてわずらわしさを感じる症状です。人によってはくしゃみ・鼻水だけでなく、目や咽の痒みを伴うことがあります。

漢方薬では、くしゃみと多量の鼻水が主たる症状の場合には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)がよく用いられます。そして、目や咽の痒みを伴う花粉症対策のひとつとして、小青竜湯と桔梗石膏(ききょうせっこう)を併用して服用することがあります。
くしゃみと鼻水の原因
目や咽の痒みを伴う花粉症は、くしゃみ・鼻水だけの花粉症と何が異なるのでしょうか?花粉症の症状とその原因についてみてみましょう。
くしゃみは風邪(ふうじゃ)といって外気の影響によって起こります。
鼻水が透明なのは寒邪(かんじゃ)。これは外気だけでなく、体の中に冷えがあることを示します。
そして、鼻水の量が多いのは体内に水滞(すいたい)があることを意味します。水滞とは水分代謝がわるく、不要あるいは過剰な水分が体内に停滞している状態です。それが鼻水となって鼻から流れ出てきます。
花粉症の主症状であるくしゃみ、透明で多量な鼻水の原因は、「風寒邪+水滞」です。
小青竜湯の効能
このような状態に使われるのが小青竜湯。
小青竜湯は風邪を発散させ、寒性の水滞を除く効果がありますので、「風寒邪+水滞」の改善に効果があります。

効能は次のようにあらわされます。
「うすい水様の痰を伴う咳や鼻水が出るものの次の諸症:気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症」
花粉症に用いる際の解釈としては、気候や花粉などの影響によって生じる透明で水様の鼻水や痰、くしゃみ、咳などの症状に用います。
では、目や咽の痒みを伴う場合はどうでしょうか。
目・咽の痒みの原因は?
目や咽などの粘膜の痒みは、熱邪(ねつじゃ)があるときに起こりやすいです。
この熱はどこからくるかというと、温暖な外気の影響のほか、暑がりの体質、精神的ストレスや緊張、慌ただしい生活による気の焦り、寝不足などによって体内に熱が生じます。
つまり、春の温かい空気や体内にこもった熱邪が目や咽の痒みを引き起こします。
ということは、くしゃみ・鼻水だけでなく、目や咽の痒みを伴う花粉症は、「風寒邪+水滞+熱邪」が原因です。
「桔梗石膏」で熱邪に対処
そこで、目や咽の痒みを伴う花粉症の対処として、「桔梗石膏(ききょうせっこう)」という漢方薬を小青竜湯にプラスして服用することがあります。
「桔梗石膏」は、桔梗と石膏という2つの生薬から成ります。
桔梗は化痰・排膿の作用があり、石膏は熱を冷ます生薬。ともに肺に働きかけますので、鼻・咽・皮膚など肺に関連する部位に効果があります。
また、桔梗は薬の作用を体の上部へ集中させることから、2つの生薬の組合せは、頭部の粘膜である鼻・咽・目などの熱邪を除きます。
まとめますと、花粉症でくしゃみ、多量の鼻水が出る症状には小青竜湯が適用します。さらに目や咽の痒みを伴う場合には、その対策のひとつとして、小青竜湯と桔梗石膏を併用して服用することができます。
症状が落ち着いたら休薬
最後に、服用にあたっての注意点です。
小青竜湯は麻黄(まおう)という生薬が配合されているため、持病や体質によっては服用を控えます。とくに心臓や腎臓の病気、高血圧、前立腺肥大のある方は主治医に相談しましょう。
桔梗石膏の石膏は冷やす性質が強いため、胃腸虚弱な人やお腹が冷えやすい人は注意が必要な場合があります。
小青竜湯と桔梗石膏は症状のあるときに服用する漢方薬ですので、症状が落ち着いたらお休みします。
漢方薬の服用期間、ご自身の体調・体質に合う漢方薬については漢方専門の薬局または医療機関に相談されることが望ましいです。
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