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公開日:2026.03.07 更新日:2026.03.0730view

目覚めのための光と音~震為雷

易経の叡智を人育てや自己の成長に生かす~Vol.6

春の号令「春雷」
寒暖差の激しい日々を経て、固く閉じていた桜の蕾がほころぶころ、ぽかぽか春の陽気を感じる季節に、雷は、突然やってきます。あたりがふっと暗くなったと思ったら、はっと目を見開かせる強い光と耳を裂くような轟音で、我々に驚きを与えます。

二十四節気「春分」の一つ前、「啓蟄(けいちつ)」は古代の人々がこの時期、土の中で冬ごもりしていた虫や蛇やトカゲたちが、春の雷に起こされて土を啓(ひら)き、地上にモゾモゾと這い出してくるのだと考えたことに由来します。地中に潜っていた生命たちが蠢(うごめ)き出すのは、雷がそれを奮い立たせ動かしているからだ、というのです。

八卦の「震(しん:☳)」は一番下に陽爻(ようこう:⚊)、真ん中と一番上に陰爻(いんこう:⚋)が配されており、自然界における「雷」を象徴します。雷は動的なイメージをまといますが、易経51番目の卦、震(☳)が二つ重なった「震為雷(しんいらい)」の卦は、その動的イメージがさらに強調されます。雷が発生する時のあの、瞬時にガラッと場面が変わるような情景を思い浮かべられるとよいかと思います。

怒鳴りつけても動かないもどかしさ
子育てをしている中で、もどかしく感じるこんな場面はありませんか。
いつもの朝。目覚ましは鳴っているのに一向に起きない、布団にくるまったままの我が子。もうあと20分でも早く起きれば、朝ごはんもちゃんと食べれて1本早い電車にも乗れそうなものを…。
そして学校からの帰宅後。宿題しない、勉強しない、ずっと自室にこもりきりでSNSや動画を見たりゲームしたりしてばかりいる。定期テストも近いのに…。テストの点や内申点は受験に影響するのに…。
「朝はゆとりをもって起きなさい。」「帰宅後は勉強したことの復習や次の時間の予習をしなさい。」口をはさみたくなる場面は日常に無数にあります(笑)。

精神的に追い込まないようにと、声量や表現に気を配りながらいくら優しく諭しても、この子の心も行動も全く変わらない。我が子の将来の幸せな毎日や豊かな人生を願うあまりに、埒が明かないとイライラして、叱咤激励という大義名分のもと、ついつい大きな声で怒鳴りつけてしまうことも時にはあるでしょう。
ライフイベントを子より先に一通り経験し、失敗も重ねてきたからこそ、「我が子にはこんなところでつまずいてほしくないから」「動き出さなくては何事も始まらないから」と、私たち親は、我が子をなんとか動かすために雷を落としているわけなのです。けれど、我が子といえども別人格をもつ他者なので、なかなか親の思う通りにはいかないものですよね…。

「雷に打たれたような」出逢い
ポテンシャルはあるのになかなか動き出せない…というお子さんは現代では特に多いと思います。衣食住の不足もなく、それなりになんとなく生きていけるのであれば、特別なきっかけでもなかったら、心の底から奮い立つような、情熱やエネルギーが湧いてくるという方が不自然なのかもしれません。
かといって、大人が大声で怒鳴りつけて外側から奮い立たせようというのもどうか、というのが現代の風潮です。

では、動き出さないこの子を動かすものは何か…?それはもしかしたら「出逢い」なのかもしれません。興味を掻き立てられる物ごととの出逢い、魅力的な人との出逢い。人気曲の歌詞などにもあるように「雷に打たれたような」出逢いというものが人生にはあるのでしょう。

人生を四季で例えるならば、子世代である学生や新社会人は春(青春)、我々親世代は秋(白秋)です。つまり、収穫して蓄え静かに内にこもる「陰」の季節を生きる親世代とは異なり、子世代は活動的な「陽」の季節を生きているので、外に向けて自分自身を開き、様々な出逢いを経験し、その中で「これだ!」というものを見つけ、内なる何かに突き動かされるように行動し始めることこそが自然の摂理に合っているのかもしれません。そうなればあとはこちらの干渉は不要で、本人の努力と他者とのつながりの中でやがて何かを成し遂げることができるでしょう。
新しい先生、新しい友人、新しい学び…。進級進学の春はまさに出逢いの季節ですね。親としては、「この子を内側から奮い立たせるような、素敵な出逢いがありますように」と祈りながら、そっと見守ることしかできないのかもしれません。

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林 美穂
林 美穂 - Miho Lin

[ニホンドウ漢方ブティック 梅田阪神店 上級相談員・薬日本堂漢方スクール講師]
お茶の水女子大学文教育学部卒業。中国人の夫との国際結婚をきっかけに、中医である義祖父の影響で東洋医学や薬食同源の考え方に出逢う。2011年に薬日本堂入社。相談員として臨床経験を積み、2020年までカガエ カンポウ ブティック京都河原町店の店長を勤め、京都の老舗料亭やホテルでの漢方セミナーも複数開催。現在は二ホンドウ漢方ブティック梅田阪神店にて上級相談員として女性のさまざまなお悩みに向き合いながら、漢方スクール大阪校にて講師を務める。四児の母。

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