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公開日:2026.02.21 更新日:2026.02.2131view

のどの異物感は気鬱のサイン~半夏厚朴湯

漢方薬のつぶやき vol.40

気を巡らせる代表的な漢方薬
気の流れを整える作用のことを漢方では「理気(りき)」作用といいます。いわゆる気の巡りをよくする働きです。その代表的な漢方薬が、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)。
気分がすっきりしない、不安感で鬱々とするという経験は誰しもあるかと思います。実はこのように気持ちが塞いでいるときには、すでに気の流れが滞っています。我慢していると次第に心と体に不調が起こります。
気が滞っているときにそれとわかる3つの症状に、今回紹介する半夏厚朴湯が使われます。

気の滞りで起こる3つの症状
半夏厚朴湯は気の滞りによって発生する次の3つの症状に適用します。
①精神的な不調
②胃腸の不調
③咽喉部の不調

ひとつめの精神的な不調とは、気分がすっきりしない、気が重い、憂鬱、焦りや不安感、気持ちが落ち込むなど。
このような精神状態は普通に生活していればしばしば起こりえます。短期で回復して気持ちが晴れればよいのですが、長引くと重くなっていき、鬱っぽくなったり、自律神経失調症、不安神経症などと診断されるような状態になることがあります。

そして、気の滞りは精神だけでなく体にも影響します。

ふたつめの胃腸の不調です。
食べ物を消化・吸収・排泄するには、気がスムーズに流れていることが大切。胃の内容物が順次小腸へ降りていくのも気の働きのおかげです。気の流れが滞ると消化がうまく進まず、食欲が落ちる、胃が痞えた感じ、お腹の張り、吐き気など胃腸の不調が起こります。

“梅核気”といえば半夏厚朴湯
半夏厚朴湯が適用する症状、3つめは咽喉部の不調です。
ストレスや緊張があるとき、咽に物がひっかかっているような異物感を感じることがありませんか?人によって感じ方はさまざまで、咽が痞える感じ、咽が締め付けられる感覚、唾を飲み込むときの不快感などと表現されます。

咳払いをしたり、唾を飲み込んで異物を除こうとするのですが取れません。なぜなら実際には異物はないからです。あるのは、気の滞り。漢方では咽につかえた気の滞りを「梅核気(ばいかくき)」と呼びます。「核」は種のことで、梅の種がつまっているような様子をあらわします。

気の滞り、気の鬱積が、咽喉部に痞えとしてあらわれたものが梅核気です。この梅核気は半夏厚朴湯を用いる際の目安としてもっとも特徴となる症状です。

「気の滞り」のサインをキャッチ
半夏厚朴湯の効能は次のようにあらわされます。
『気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔吐などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、のどのつかえ感』

ストレスや緊張が続いたり、悩みや不安を抱えたりして、気分が重い、気持ちが滅入る、憂鬱、気が沈むような状態にあるとき、体を構成する要素のひとつ「気」の流れはすでに停滞しています。しかし、実際には気分が塞いでいることを本人が気づいていないことが多いのではないでしょうか。

私たちは多少のストレスや悩み、不安感はあるものだ、という前提で生きているので、気分が塞ぎいですっきりしない状態を我慢して過ごす傾向があるように思います。

心身一如。心と体はひとつです。
我慢強いがゆえ心の変化に気づけないときは、体にあらわれた症状をサインとして気づくことができます。

咳払いしたくなるような咽の異物感・違和感(梅核気)、そして胃の痞え、お腹の張り、吐き気といった胃腸の症状は「気の滞り」のお知らせです。
症状は体からのサイン。体からの声が聴こえたら、自分の心にも目を向けてみましょう。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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