- 飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。
アトピー性皮膚炎~温清飲
漢方薬のつぶやき vol.36
症状緩和と体質改善
アトピー性皮膚炎は漢方相談の多い皮膚病のひとつです。反復して発症するアトピー性皮膚炎は長期的かつ根本的な対処が大切なので、症状緩和と体質改善に漢方薬と養生が役立ちます。
アトピー性皮膚炎に使われる漢方薬のなかで、今回は温清飲(うんせいいん)をご紹介します。

皮膚の赤み・乾燥・痒み
アトピー性皮膚炎の症状は個人差があります。患部が赤い、水泡がある、ジュクジュクした滲出液がにじむ、乾燥してカサカサしている、乾燥がひどくてひび割れる、痒みがひどい、掻くと出血するなど。皮膚の状態、辛い症状、程度はさまざまです。
温清飲は患部が赤く、乾燥していて、痒みのある状態に用います。
皮膚が赤くなるのは熱がこもっていることを示します。触れると熱感があったり、熱によって痒みがひどくなったりすることがあります。
皮膚が乾燥する原因は2つ。ひとつは熱です。熱によって皮膚の水分が失われて乾燥します。もうひとつは、血不足。皮膚は血(けつ)によって栄養と潤いを与えられています。血が行き渡ることで健康な肌を維持し、傷があれば修復します。ですから血不足だと皮膚は乾燥し、湿疹や傷は治りにくくなります。
そして、熱と血不足の両方とも、痒みを引き起こす原因となります。
2つの漢方薬を合わせた構成
患部の赤みと乾燥を改善する温清飲。生薬構成はシンプルで大きく2つのグループから成ります。
ひとつは、熱を冷ますグループ。
黄連(おうれん)・黄柏(おうばく)・黄芩(おうごん)・山梔子(さんしし)
もうひとつは、血を補うグループ。
地黄(じおう)・当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)・川芎(せんきゅう)
実は2つのグループはそれぞれが漢方薬になっています。
前者のグループは黄連解毒湯(おうれんげどくとう)。
体の熱を冷ます代表的な処方で、単独でも皮膚病や胃腸病などに幅広く用いられる漢方薬です。
後者のグループは四物湯(しもつとう)です。血を補う基本処方で婦人科のトラブルや貧血のめまいなどに使われます。
黄連解毒湯と四物湯。2つの漢方薬を合わせた構成になっている温清飲は、皮膚の赤みや熱感を冷まし、皮膚の栄養である血を補って潤いを与え、同時に皮膚の修復を促します。
温清飲の効能と解釈
温清飲の効能は「体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎」とあらわされます。
「皮膚はかさかさして色つやが悪く」というのは血不足の状態です。「のぼせ」は熱の症状ですので、皮膚患部に熱をもっていれば「のぼせ」がなくても使用できます。
また、婦人科のトラブルが多く記載されていますが、婦人科のお悩みがなくても使えますし、男性も服用できます。
温清飲は「患部が赤く、カサカサと乾燥して、痒みのある」皮膚症状に適用します。
病院の薬を急に止めない
アトピー性皮膚炎で漢方薬を使用する際の注意点としては、病院から出されている外用薬・内服薬をいきなり止めないことです。
効き目の早い西洋薬に比べて漢方薬の効果はゆっくりとあらわれてくることが多いです。西洋薬を急に中止すると、抑えられていた症状がぶりかえすことがありますのでしばらくは併用するようにします。
また、アトピー性皮膚炎の改善には、食事の仕方、皮膚の保護や洗剤・衣類の選択などの環境衛生、ストレスの改善といった生活養生も大切です。養生の実践は皮膚症状の改善はもちろん、漢方薬の効果のあらわれかたにも影響します。
最後に。長期化するアトピー性皮膚炎の対処は、症状が悪化している時期と、落ち着いている時期とで漢方薬を変えることがあります。
温清飲は長期服用可能な漢方薬ですが、変化する皮膚症状に応じて適切な漢方薬を服用するために、漢方専門の薬局や医療機関に適宜相談するようにしましょう。
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