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公開日:2025.10.07 更新日:2025.10.07187view

ふれあいと漢方で育む、ふたりの妊活養生

漢方で妊活応援!パートナーと深める性養生vol.4

妊活は陰陽和合の法
こんにちは。漢方スクール講師・カウンセラーの荒毛です。
過去二回は女性・男性の「性と精」についてコラムを書きました。今回は二人で考えたい「性と精」です。
妊活の病院治療と、漢方でのアプローチの違いと、漢方薬局でカウンセリング時によく聞く声を書かせていただきます。

病院治療では、不妊の原因を細部まで調べ、人工的に妊娠を促します。
主に検査やタイミングのアドバイス、投薬治療などが行われます。
一方漢方では、生活習慣の乱れなどから、本来持っている妊娠・出産するための力(生命力=精)を発揮できない状態ととらえます。
主に漢方薬や鍼灸、食事、運動、休養など、生活に根付いた体質の改善を目指していきます。

漢方薬局でカウンセリングを行っていると女性からは、
「不妊治療をはじめて、スキンシップが減った」
「パートナーとの夜が義務的に…心からふれあえていない気がする」
「治療だから仕方ないけど、つながりが希薄になった・・・」という声を聞きます。

男性からは、
「ストレスや疲労で、夫婦の時間が取れない」
「子供は欲しいが、義務的で性的な高まりがない」という声を聞きます。
ここで改めて考えたいのは、子供を授かるというのは、体と体のことだけでしょうか?
心のつながりや、安心感といった温かい気持ちが必要かもしれません。

今回のコラムではパートナーと一緒に、
「心身ともにつながり」を高める養生と、「男女ともに元気になる」漢方生薬についてお話していきます。

手をつなぐという陰陽和合
東洋思想では、世界のすべての現象は「陰」と「陽」という二つの気で成り立っていると考えます。
陰陽は対立するものではなく、お互いに共存しながらバランスを保っています。
男女にたとえれば、女性は「陰」、男性は「陽」です。そして日本最古の医学書『医心方』には「陰陽相交われば命が誕生する」と記されており、陰と陽が親しみ合って交わること(=陰陽和合)が新しい命を生む営みとして示されています。

みなさんは、恋をした頃に「手をつなぐだけで胸が高鳴った」思い出はありませんか?
「手」は気や血が指先にすみずみにまで巡っています。手をつなぐことは、単なるスキンシップではなく、陰と陽の気(エネルギー)が出会い、合わさり、交流し、小さな陰陽の和合がおきています。



科学的には、愛する親しい人とのふれあいは、「オキシトシン」というホルモンが出ます。
愛情ホルモン、幸せホルモンなどの名前で聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
オキシトシンの働きは、子宮を動かす働きがあり、出産時には子宮を収縮させ出産しやすくし、授乳期には母乳を出しやすくします。
また人との信頼関係や安心感を深め、ストレスをやわらげる働きです。
性交時には、スキンシップ・愛撫の段階から出始め、オーガズムの際に大量に分泌されます。

ヒツジで実験したデータによると、オスの精巣にオキシトシンを注入すると、精子量が増加、運動率も上がったという研究結果が報告されています。
また、人間の女性の場合には、オキシトシンを注入すると、子宮収縮の振幅が大きくなり、精子を吸入する力が高まることが分かっています。
ふれあうことで生まれる、愛のパワーといったところでしょうか。

子宝を願って用いられてきた生薬・食薬
古くから妊娠や子宝を願うときに大切にされてきたのは「精(生命力)」を養うことでした。
使うものはいろいろとありますが、その中でも代表的なものをいくつか紹介します。

1. 男性におすすめ!
・高麗人参(こうらいにんじん) … 気を補う代表的な生薬!
・黄精(おうせい) … 江戸時代の俳人・小林一茶も愛飲し、52~65歳の12年間で3人の妻と5人の子を儲けたといわれる強壮薬!
・山薬(さんやく) … 山芋の生薬名。精を補い、胃腸を整えます!

2. 女性におすすめ!
・当帰(とうき) … 「婦人の聖薬」血を補う女性の味方!
・阿膠(あきょう) … 止血補血、流産予防や出血傾向に
・枸杞子(クコの実) … 中国では古くから「不老長寿の薬」、欧米では「スーパーフード」、世界中でその効果が認知されています

3. パートナーと一緒に!
・霊芝(れいし) … 精気を高める、五臓を養う滋養薬!
・鼈(すっぽん) … 血を補い、滋養強壮に。中国では不妊症、婦人科疾患、各種腫瘍などによく使います
・マカ(まか) … 男性向けの印象が強いですが、女性のホルモンバランスも整えることが近年わかり注目が高まっています
生薬は一例です。服用する場合には専門家にご相談ください。

手は気血の通り道。そこから陰陽の気が交流し、二人の間につながりが生まれます。
性器を重ね合うだけではなく、お互いが手を差し出してつなぐ。そんな小さな所作だけでも、陰陽は交わり、和合が起こります。
生薬や食薬の知恵とともに、こうした「ふれあいの養生」を見直すことは、妊活だけでなく、二人の関係をより豊かに育むヒントになるでしょう。
次回は、古代中国の性愛術 房中術を交えて妊活のお話をしていきます。お楽しみに。

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荒毛 克麻
荒毛 克麻 - Katsuma Arake

[カガエ カンポウ ブティック パルコヤ上野店店長・薬日本堂漢方スクール講師]
自身の体調を崩した事をきっかけに、薬日本堂漢方スクールにて漢方を学び始める。養生・漢方の魅力を多くの方に伝えたい想いから、2012年薬日本堂に入社。現在はカガエ カンポウ ブティック パルコヤ上野店店長として、漢方相談を行いながら、スクール講師を務める。ダイエットや美容の相談を得意とし、笑顔になれるカウンセリングに定評がある。テレビ新潟では、漢方コーナー「おしえて漢方」の出演経験も持つ。

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カガエ カンポウ ブティック パルコヤ上野店

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