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公開日:2025.07.14 更新日:2025.07.1454view

日本人はおなかが弱い!胃腸をいたわる漢方

漢方であなたを応援vol.40「胃腸をいたわる」

おなかにとって過酷な夏
蒸し暑い日本の夏、冷たいそうめんやキンキンに冷えたビールが美味しいのですが、暑さをしのぐ冷たい飲み物や冷やす食材は、摂りすぎるとおなかを壊す原因になります。
夏は食中毒による胃腸炎を含め、おなかにとっては過酷な季節。漢方・薬膳の考え方では、胃腸をいたわることで、夏も元気にすごせると考えます。夏ばて対策のためにも、おなかをみつめてみましょう。

日本人のおなか事情
身体の中央にある胃腸は、飲食物の消化吸収を担う大事な場所。漢方では五臓の脾(ひ)と六腑(ろっぷ)の胃、小腸、大腸を指します。
特に脾と胃は連携しており、生命活動に必要なエネルギーである気(き)、栄養の液体である血(けつ)、全身を潤し老廃物を外に出す水(すい)を作り出します。

おなかの調子が悪い時を想像してみてください。
□おなかが痛い
□おなかがゴロゴロ鳴って下痢する
□食欲がわかない
□食べるとすぐにトイレに行きたくなる
□おなかが張って苦しい

おなかの調子が悪いと食が進まず気血水を補充出来ないので、疲れやすい、疲れが残る、ふらふらする、痩せてくるなどの不調があらわれます。元気でいるためには胃腸をいたわることが大切であることがわかります。

漢方では、季節の気候や感情の変化などが不調の引き金になると考えます。胃腸の健康に関わるのは、梅雨から夏の湿気とくよくよ思い悩むこと。日本人はおなかが弱いと言われますが、それは湿度の高い島国であること、細やかな気配りを常に行う民族であることが影響しているかもしれません。テレビコマーシャルでも、毎日のように胃腸薬やサプリメントを目にします。

薬膳で脾を養う
薬膳では黄色い食材が五臓の脾を養うと考えます。
かぼちゃ、さつまいも、とうもろこしなどですね。食欲が落ちた時も、かぼちゃのポタージュやサラダ、とうもろこしご飯、干し芋などもよいでしょう。

自然な甘味も脾を養います。
穀類や豆類、芋などは代表的な食べ物。胃腸が疲れて食べるのが億劫な時には、お粥や甘酒などがおすすめです。甘酒にりんごや人参のすりおろしを加えると、消化不良や食欲不振を起こしている脾の調子を整えます。

夏の胃腸をいたわる2つの漢方薬
ここで、冷房や冷たい飲み物などで冷えたお腹を助ける2つの漢方薬を紹介しましょう。
ひとつめは安中散(あんちゅうさん)。冷えによる痛みの解消が目的の処方です。
桂皮はシナモン、茴香はフェンネル、良姜はジンジャーの仲間ということで温めるスパイストリオが特徴。
さらに牡蛎(ぼれい)はカキの貝殻で胃酸過多を抑えてくれます。延胡索(えんごさく)には鎮痛効果があるので、急な胃痛、胃もたれ、胃酸が上がってくるような時におすすめです。

ふたつめは人参湯(にんじんとう)。もともと胃腸が弱くて冷えやすい人の腹痛や下痢解消が目的の処方です。
高麗人参と乾姜がお腹を温め、白朮(びゃくじゅつ)が気を補い水を巡らせることで、脾を強化します。普段からお腹が冷えて軟便傾向、食欲がわかない人、急な腹痛と下痢が生じた時におすすめです。

この2つが使いこなせると、夏に冷たいものでお腹を壊した時にもすぐに対処できるはず。ぜひ漢方救急箱に加えてみてください。胃腸によい漢方薬はこれ以外にもたくさんあるので、困った時には漢方専門の相談員に相談しましょう。

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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