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公開日:2024.05.07 更新日:2024.08.013769view

リラックスして肚をどっしり据えるための動養生~スワイショウ

しなやかに巡るからだをつくる~動養生のポイント~Vol.2

腰より上はガチガチ、足腰は頼りない現代人
新年度がスタートしてからひと月あまり。今年はちょうど入学式シーズンに桜が満開となる地域が多く、春の陽光に照らされて咲き誇る桜のその姿は新しい門出を祝福してくれるかのようで、素敵な年度始まりだったかと思います。
入社式を迎えた新入社員の方々も、通勤途中に満開の桜を目にすることできっと励まされたことでしょう。

その一方で、慣れない環境で気を張る場面が多かったということもあるのではないでしょうか。
心の緊張は体の緊張にも繋がり、上半身が力んで肩が上がり、その状態のまま長くいると肩こりや頭痛など、肩より上がガチガチにつまってつらい状態になります。
新年度を迎える春は寒かった陰の季節(秋冬)から暖かい陽の季節(春夏)へと転化するタイミングでもあるので、下から上へ気(エネルギー)が上がりやすいということも影響しています。

日常生活を思い浮かべてみても、日頃から使い過ぎでこり固まった上半身と使わなさ過ぎで筋骨の弱った下半身。テレビやインターネットから過剰に情報をインプットし続け、ブルーライトを長時間浴びながら、オンもオフもなく懸命に働き続けてオーバーヒートしそうな脳や眼球、その疲労から気血が滞り、肩こりや頭痛といった痛みに繋がります。
加えて、歩く機会が減少し、エレベーターやエスカレーターに慣れて階段も使わなくなっている我々現代人は、下半身の筋肉や骨への刺激が減っており、それが筋骨の衰えに繋がり、転倒や骨折もしやすく、ますます動けなくなって衰弱していくという恐れがあります。

使わない身体機能は低下し失われていくのが自然の摂理。平均寿命は延びて人生100年時代と言われますが、その中でいかに自分らしく健やかに生活を送る健康寿命を延ばすか、というのは大事なテーマです。

上実下虚(じょうじつげきょ)から上虚下実(じょうきょかじつ)へ
「上実下虚」という言葉があります。ここでの「実」とは体内のエネルギー(気)や血流(血)や体液循環(水)の滞り、「虚」というのは不足し虚弱な状態です。
過度の精神的・身体的ストレスや運動不足から、上半身は実して下半身は虚している。この不安定でアンバランスな「上実下虚」の状態を、理想的な状態とされる「上虚下実」へと整えるのにうってつけの体操が、気功の一つであるスワイショウです。
いくつかやり方がありますが、このコラムでは、両手を同時に前後に振るスタイルをお伝えします。

①足を肩幅に開き、膝を緩めてゆったりと立つ。肩や肘の力を抜いて両腕はだらりとたらす。

②腕を前後に振り出し、前から後ろに振る時に漕ぐように少し力を入れ、その反動で手が前へあがるようにする。
次第に動きを大きくし、前は肩の高さまで手が上がるようにする。

③肩の高さまで手が上がるようになったら数を数え、前後1往復を1回として100回くらい、力まずにリラックスして腕を振る(慣れてきたら200、300と増やしていく)。
④100回終えたら、波が引いていくように次第に振りを小さくしていき、自然に止まるようにする。
⑤深呼吸を大きく3回、まばたきを強く3回して、「これで終わりです」と心に念じる。
⑥手足を軽く振ってリラックスする。

お風呂上りにやってみよう
腕を振るだけの簡単な動きですし、数分あればできるので、さっそく今晩からやってみましょう。
実は、スワイソウは中国語では「甩手」と書きます。「甩」は放り捨てる、投げるという意味。
腕を振りながらその日にあった嫌なことも、モヤモヤした感情もポイポイと手のひらを通して背後へ捨てるイメージでやってみましょう。実際、巡りがよくなると体内の疲労物質も代謝しやすくなります。

リズミカルな反復運動なので、自律神経を整えるのにもおすすめ。
自律神経の集中する脊柱(背骨)周りの筋肉がほぐれるよう、肩甲骨がしっかり動くように意識して腕を振りましょう。
勢いよく腕を振る上半身を支えようとする下半身の方は、臍の下の丹田(たんでん)のツボに気を下ろしつつ、身体の軸をぶらさないようにどっしりと構えるようにします。そうしているうちに、肚がすわった安定した状態を維持できるようになっていきます。

その日のモヤモヤを手放すことができずに寝る前に思い返して考えてしまうと、イライラしたり落ち込んだり、眠りの質を落とすことにもなってしまいます。お風呂上りのさっぱりした時にスワイショウをして、心もすっきりしてからお布団に入ってください。
「お風呂上がりのスワイショウ習慣」を続けるうちにぐっすり眠れるようになり、エネルギーが充実して翌朝元気にスタートが切れるようになっていきます。心身が元気だと、仕事も勉強も前向きに取り組めそうですね。
自分らしく伸びやかにいられるように、その日の疲労やストレスはその日のうちに解消していきましょう。

林 美穂
お茶の水女子大学文教育学部卒業。中国人の夫との国際結婚をきっかけに、中医である義祖父の影響で東洋医学や薬食同源の考え方に出逢う。2011年に薬日本堂入社。相談員として臨床経験を積み、2020年までカガエ カンポウ ブティック京都河原町店の店長を勤め、京都の老舗料亭やホテルでの漢方セミナーも複数開催。現在は二ホンドウ漢方ブティック梅田阪神店にて上級相談員として女性のさまざまなお悩みに向き合いながら、漢方スクール大阪校にて講師を務める。四児の母。
ニホンドウ漢方ブティック梅田阪神店
薬日本堂漢方スクール

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