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公開日:2024.01.20 更新日:2024.02.151133view

肌がカサカサして痒い~当帰飲子

漢方薬のつぶやき vol.15

背中・すね・太ももがかゆい
乾燥する季節は、鼻やのどの乾燥だけでなく、皮膚の乾燥も気になります。
背中やすね、太ももなどがカサカサしてかゆい。秋冬はかゆみの漢方相談が多くなります。

そこで、皮膚の乾燥とかゆみに使われる漢方薬、当帰飲子(とうきいんし)を紹介します。

かゆみの原因
漢方ではかゆみの原因には、「熱・湿・燥」があると考えます。

「熱」とは、皮膚が赤くなったり、熱感のある状態です。
「湿」とは、水泡があらわれたり、ジュクジュクと分泌液がでているような状態。
「燥」は乾燥のことで、皮膚がカサカサして、ひどいとひび割れたり、粉を吹いたりする状態です。

かゆみは、熱・湿・燥すべてで起こりますが、原因が違うので対処が異なります。
「熱」であれば熱を冷まし、「湿」は乾かして水泡や分泌液を除き、「燥」は潤すことでかゆみを止めます。

今回紹介する当帰飲子は、乾燥によるかゆみを改善する漢方薬です。
そして、皮膚の乾燥はなぜ起こるかというと、血不足から生じます。

血不足のかゆみ
「皮膚は内臓の鏡」といわれます。
皮膚の乾燥は気候の影響だけでなく、体内が乾燥していることのあらわれです。

体を構成する成分である気血水の中で乾燥ともっとも関係が深いのは、血(けつ)です。血は全身に栄養を与えて潤すはたらきがあります。
肌に血が十分行き届けば、潤いとツヤがあって、新陳代謝が活発、皮膚の健康が保たれます。
ですから乾燥によるかゆみの対策は、血を補い、潤いを与えること。

血を補う代表的な漢方薬に「四物湯(しもつとう)」があります。
当帰飲子はこの四物湯を含んでいます。

肌を潤し、かゆみを止める配合
当帰飲子を構成する生薬はそのはたらきから大きく2つのグループに分けられます。
ひとつは、血(けつ)を補うグループ。
もうひとつは、かゆみを止めるグループです。

さらに、第3の生薬として、皮膚のバリア機能をサポートする生薬も配合されていて、肌の抵抗力を高め、修復を促進します。

当帰飲子の効能は
「冷え症で、皮膚が乾燥するものの次の諸症:湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、かゆみ」などと表記されます。

皮膚乾燥症、老人性皮膚掻痒症、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬などに使われるほか、脱毛症にも応用されます。

適切に使う2つのポイント
当帰飲子が適用する皮膚の状態に、見た目は何も無い、ということがしばしばあります。つまり、湿疹や皮膚の変色などはないけれどかゆいのです。
必ずしも湿疹がみとめられなくてもかゆみがあれば使用できますし、湿疹がある場合にはあまり大きくない丘疹です。

では、適切に使用するためのポイントを2つお伝えします。
ひとつは、乾燥していること。
「血不足からのかゆみ」に効果のある漢方薬です。血不足では皮膚は乾燥してカサカサしていますので、分泌液が出ているものや水泡の湿疹には使いません。

ふたつめは、赤みが強くないこと。
かゆみのある部位や湿疹の色は肌の色とさほど変わりないことを確認してください。赤みが強い場合は、熱をもっていることをあらわします。当帰飲子は温める性質の漢方薬ですから、熱の強い皮膚症状には適しません。

一言で「かゆみ」といっても、かゆみの原因にはいくつかあり、原因や皮膚の状態に応じて使う漢方薬が異なります。
当帰飲子は、血不足が原因の皮膚の乾燥、かゆみ、湿疹などに使います。秋冬になると肌がかゆくなる人は参考にしていただければと思います。

動画で!皮膚の痒みにもいろいろ種類があります。あなたは、どのタイプ?乾燥による皮膚の痒みに~当帰飲子


飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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