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公開日:2023.07.07 更新日:2024.02.021777view

四季を感じる食べ方~旬のもの、土地のものを食べる

体質と生き方を左右する食べ方~食養生のポイントVol.3

ジメジメして蒸し暑い夏、いかがお過ごしですか?
今年も半分終わり、もう7月ですね。今日は七夕。二十四節気では小暑に入り、ここからだんだん本格的な暑さが始まります。
これを読んでくださっているあなたは、夏はお好きですか?

私は四季のうちでは夏が一番好きです。子どものころからずっと水泳をしていて、特に高校時代、水泳部の活動に打ち込んでいた頃の自分を思い出し、夏は一番気持ちが前向きに、活動的になります。
40代の今でも気持ちが外に向いて、子どもたちを山や海へ連れ出してアウトドアを楽しみたいな、とあれこれ計画してしまいます。

動物も植物も、春に生まれたいのちがすくすくと成長し栄え、自然界がエネルギーに満ち溢れている季節が夏です。
人も自然の一部ですので、私たちの体内でも新陳代謝が活発になり、循環もよくなります。

ただやはり、四方を海に囲まれている日本の夏は気温だけではなく湿度も高く、蒸し蒸しとした暑さで日中は外に出るのがおっくうだし、晩は寝苦しいし…。夏はしんどいな、早く秋になって欲しいなぁ、というお声も聞こえてきます。
汗をかくのでベタベタするし、熱中症なども気をつけなくてはなりません。クーラーの効いた室内でアイスクリームを食べて薄着でゴロゴロが一番!というのもよくわかります。
ただ、その過ごし方が毎日のように続くと身体の中から冷えきって、内臓も糖質や脂質でベタベタになり動きが鈍って、全身の重だるさやぐったり感に繋がりかねません。

夏野菜の力
目を向けたいのが夏野菜です。きゅうりにトマトにすいか、ナスや冬瓜は体の余分な熱を冷まし、体液の循環を良くしてくれます。

体の内側から熱を冷ますことで、クーラーを使う頻度や設定温度を少しでも下げることができれば、身体への負担をへらせるかもしれません。また、水分補給という観点からも、水やお茶やジュースによる補給ばかりでは消化管が疲れて吸収力が落ち、飲んだ分をきちんと身体にとりこみきれないこともあります。先ほど挙げた野菜たちは水分たっぷりですので、夏野菜を食べることが水分補給の一助ともなります。

漢方の考え方では、食べ物によって身体を温めるものと冷やすものがあるととらえており、身体に熱がこもっていれば冷まし、冷えていれば温めようという発想で、アンバランスな状態を解消し元気でいられるようにします。暑い土地、暑い季節には身体の熱を冷ます食べ物が、寒い土地、寒い季節には冷える身体を温める食べ物がとれる、というのが自然の摂理です。
人も自然の一部なので、その土地の気候風土の影響を色濃く受けており、自分の生活する土地でその季節にとれる作物をいただくことで、自らの身体のバランスを整えることができるようになっています。

しかし現代では、土地も季節も問わずに世界中からの食材が一年中豊富にスーパーに並んでいます。インターネットで買い物をすれば、なおさら自由度が高まります。ビニールハウスなど人工的な環境で育てたものは、冬でも夏野菜が食べたい時にそのニーズを満たします。季節先取りや季節はずれの珍しいものは、消費者の目を引いて購買意欲を掻き立てますが、健康にとってはどうでしょう?
植物の能力に頼らなければ太陽のエネルギーを自分の身体に取り込める形に変換できない我々人間にとっては、太陽や大地のエネルギーがたっぷり蓄えられている旬の食材を選ぶことが、自分や家族が元気でいるために欠かせない、大切なことなのです。

日本の気候風土と日本人のからだ
日本は高温多湿の気候風土で、穀類や野菜の栽培に適しており、昔から穀類を主体にした菜食型の食事を基本にしてきました。また、カビや細菌、酵母をうまく利用した発酵食品も味噌や納豆やぬか漬けなど豊富であり、その中に含まれる植物性乳酸菌を日々の食事によってとりいれ、腸を助けてきました。
こうした食生活は、海外の他の土地の方々に比べて腸が長いという日本人ならではの身体のつくりに合っており、腸が元気だからこそ病気になりにくく、元気でいられます。

食べたいものを食べたいときにいつでも食べられる、日本にいながら海外の他の土地・文化圏の食材や調味料が容易に手に入るということは、大変便利で普段と違うという目新しさがあります。けれど、異なる気候風土で育ち収穫され、異なる文化圏で常食されているものは、その土地の方々には良いのですが、それを食べ慣れていない日本人の身体のつくりには合わなかったり、体調を崩すきっかけになりかねません。

自分が過ごしている季節や土地に合わせて、自然に沿って生きること。これはあなたが健やかで康らかな身体と心をつくりあげる第一歩なのです。その季節ならではの食材を、四季の移り変わりとともに楽しめるというのは日本ならではの豊かさのひとつではないでしょうか。野菜でも魚でも、その旬の時期に食べると、栄養もあって一番おいしいですね。
今日からは日々の食事に旬のもの、土地のものをうまくとりいれることもぜひ意識してみてください。お買い物時、スーパーの店頭で山積みに陳列され、手に取りやすい価格になっているものがその季節の旬のものであることが多いですよ。

コロナ禍で縮小もしくは中止していた日本各地での夏のイベントが、今年は通常通り開催される傾向にあるようですね。
コラムを読んでくださっているあなたが、例年よりも元気にこの夏をお過ごしいただけますように。

次回は「戦略的な食べ方~食べる順番を工夫する」というテーマです。お楽しみに!

林 美穂
お茶の水女子大学文教育学部卒業。中国人の夫との国際結婚をきっかけに、中医である義祖父の影響で東洋医学や薬食同源の考え方に出逢う。2011年に薬日本堂入社。相談員として臨床経験を積み、2020年までカガエ カンポウ ブティック京都河原町店の店長を勤め、京都の老舗料亭やホテルでの漢方セミナーも複数開催。現在は二ホンドウ漢方ブティック梅田阪神店にて上級相談員として女性のさまざまなお悩みに向き合いながら、漢方スクール大阪校にて講師を務める。四児の母。
ニホンドウ漢方ブティック梅田阪神店
薬日本堂漢方スクール

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