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公開日:2020.11.20 更新日:2020.11.207642view

冷えは万病のもと、冷えによるいろいろな痛み

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.21

冷えで悪化する肩こり、腹痛、月経痛‥
11月に入り、朝晩冷え込むようになってきました。

「冷えは万病のもと」といいます。
寒いとまずトイレが近くなります。血行が悪くなり、肩こりや腰痛、関節痛が悪化することも。月経痛や月経不順、しもやけ、腹痛や下痢など、不調を挙げたらきりがありません。

『素問:挙痛論篇第三十九』では、黄帝が岐伯に痛みについて問いかけています。
今回は冷えと痛みについて一緒に学びましょう。

不通則痛(ふつうそくつう)、巡らないと痛い!
「急に痛むのはなぜ?」
そんな問いに、岐伯は次のように答えています。
「気血が流れる経脈(けいみゃく)は、常に流れて止まることはありません。ここに寒邪(かんじゃ)が侵入すると、脈の流れが溜まりがちで遅くなり、十分に巡らなくなります。だから急に痛むのです。」

皆さん、「寒い!ということを人にジェスチャーで伝えて」と言われたら、どのような動きをしますか?
多くの方は、背中をまるめ、肩を縮めて両手を反対の腕にまわしてさするようなポーズをとります。

そう、これこそが寒邪=病気の原因になる冷気の特徴です。
身体が縮こまり動きが鈍るので、血行が悪くなり、筋肉はひきつり痛みます。寒さで肩こりが悪化する、冷たい物を飲食した時に頭がキーンと痛くなったり、胃がキューっと痛くなるのも同じ理由。

漢方では「不通則痛」 といい、何かが詰まって通らないと痛みが生じると考えます。

押さえると痛みが増したり、軽くなったり…
痛みといっても、種類や部位、程度などはさまざまです。
寒邪によって冷えて痛む場合、温めれば経脈の流れは回復して痛みは止まります。けれど、連続して寒邪が侵入すれば、冷えと痛みは長引いて止まりません。

まず大事なのは、冷えの原因を取り除くこと。
そして身体の外と内、両方から温めること。温かい場所に移動する、温かい服を着る、ゆっくりお風呂に入る、足湯に浸かる、温かい飲み物を飲む、温める食材を食べる、当たり前の対策が必要です。

強い寒邪が経脈に侵入すると、それを解消するために集まった、陽気と激しくぶつかるため、気血がたまってしまい、痛みが激しくて手も当てられません。
逆に寒邪がお腹の辺りに宿ると、周辺の血行が悪くなり痛みます。ここは手を当てて流してあげると痛みが治まります。

冷たい物を飲食すると胃腸が冷えます。
胃に寒邪がある時は、冷気が逆上して吐き気やしゃっくりを伴う痛みがあらわれます。腸に寒邪がある時は、冷気を早く追い出すために下痢を伴う腹痛が起こります。月経の時にお腹を冷やしてしまうと、生殖器とつながる経脈に流れが悪くなるため、つながっている脇腹や下腹部がひきつれて痛みます。

このように冷えは多くの痛みに直結します。
そして痛いところは気血の巡りが悪くなっているので、他の病気につながっていきます。

これからの寒い季節、防寒と温めが大切。
まずは紅茶に生姜、ほうじ茶にシソの葉、コーヒーにシナモンなど、相性のよい温め素材をプラスしてみませんか?気分もほっこり温まりますよ。



齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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