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公開日:2020.09.20 更新日:2020.09.206704view

体の中央にある大切なおなか…脾と胃の関係

黄帝と一緒に『素問』を学ぶvol.19

表裏関係にある脾胃の経絡
夏の間、冷たい物を飲んだり食べたりし過ぎて、お腹を壊してはいませんか?お腹は体の中央にあり、とても大切な臓腑である脾(ひ)と胃(い)が存在しています。
今回は、岐伯が脾と胃について、どのように語っているか、黄帝と一緒に学んでみましょう。

『黄帝内経:素問』には全身を巡る経絡(けいらく)について、多く語られます。経絡は気血の通り道で、経脈(けいみゃく)は縦に走る道、絡脈(らくみゃく)は横を走る細かい道をイメージしてください。脾を通る経脈を太陰脾経(たいいんひけい)、胃を通る経脈を陽明胃経(ようめいいけい)と呼びます。

皆さんは既に陰陽について学んだことでしょう。自然界は陰と陽、2つの相反するもので成り立っているという考え方です。
(はじめての方は「漢方の基礎知識:陰陽五行説」を参照ください。)

脾と胃は、太陰と陽明という陰と陽の経脈を通り、表裏の関係にあります。表に該当する胃は飲食したものですぐに不調を起こすなど、外からの影響を受けやすいのが特徴です。逆に裏に該当する脾は、もともとの体質や精神的な消耗など、内からの影響を強く受けて慢性的な下痢などを起こします。

胃の不調は上にあがり、脾の不調は下にさがる
脾胃のはたらきを比較すると、上下の関係がみられます。胃は口から食べたものを下へ降ろして消化吸収につなげます。脾は飲食物を直接受け取ることなく、消化吸収を担い、飲食物から身体が必要とする気血や津液を作って上へ持ち上げると考えます。
つまり、脾と胃は上下のバランスも担っているのです。

胃に不調があると、吐き気や嘔吐、しゃっくりやげっぷなど、上にあがる症状があらわれます。
脾に不調があると上に持ち上げられないので、下痢や胃下垂など下に落ちる症状があらわれます。疲れてだるく、起き上がれないなどの症状も脾が弱っている時によくみられます。
「お腹の調子がわるいなあ」と感じた時、漢方では脾の不調か胃の不調か見極めなければならないのです。

脾胃の協力で栄養が巡る
脾と胃は協力関係にあります。脾が健全であれば、飲食したものを胃が受け取って消化します。さらに飲食物は下へ降りていく中で、脾によって変化させられ、水穀の精微(せいび)という栄養物質になります。これをもとに気血、津液が作られ全身に配られることで、私たちは肉体を維持し、日々活動することができます。

こうしてみると、おなかって本当に大切なんです。気配りが得意な日本人は、気を配り過ぎて脾胃を傷めてしまうこともよくあります。毎日頑張ってくれている脾胃をねぎらうため、次の項目を意識して日々養生しましょう。

■ 腹八分目を目標に、食べ過ぎ・飲み過ぎに注意
■ 脾胃の負担を軽くするために、しっかり噛んで食べよう
■ 眠る前に脾胃の仕事を終わらせるにため、就寝前の3時間は食べない



齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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