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2020.05.211041view

漢方で見る感染症対策vol 10 銀翹散と藿香正気散

新型コロナウイルスをはじめとした感染症についてお伝えする「漢方で見る感染症対策」シリーズでは、感染症で使われる漢方薬をご紹介しています。前回はかぜや感染症の初期で、寒気や発熱、特に咳を伴う場合に使われる「麻黄湯(まおうとう)」と「麻杏甘石湯を(まきょうかんせきとう)」を紹介しました。第10回目となる今回は、薬日本堂漢方スクールの原口講師がのどの腫れや痛みに使う「銀翹散(ぎんぎょうさん)」と夏かぜに使われることの多い「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」を紹介します。


温病学から生まれた銀翹散(ぎんぎょうさん)
「銀翹散」は、温病学の名著である『温病条辨(うんびょうじょうべん)』に登場します。元々は「温病の初期、熱の邪気が体表付近にあって、まだ深く進行していない時に用いる」とあり、風熱の邪気が体内に侵入してすぐにあらわれる症状一般に用いられる処方です。

生薬のはたらき
・金銀花(きんぎんか)、連翹(れんぎょう):熱の邪気を発散させて熱を冷まし、強い香り(芳香)で体内に滞っている「湿(身体に不要な水分)」を出すはたらきがあります。また、風熱がパワーアップすると「熱毒」になるのでその毒を取り除きます。

・薄荷(はっか)、牛蒡子(ごぼうし):いずれも「涼」のはたらきがあり、熱を冷ますと同時に頭や目をすっきりさせ、咽の腫れを取り除きます。

・荊芥(けいがい)穂、淡豆鼓(たんとうち):この二つは少しばかり温めるはたらきがあります。他の生薬が冷やすはたらきがあるため、冷えすぎないように少し温めて、汗をかかせ邪気を外に出しやすくします。

・葦根(ろこん)、竹葉(ちくよう):熱を冷まし身体の潤い成分を増やすはたらきがあります。

・桔梗(ききょう):肺の気を巡らせ、咳を止め、咽喉の腫れを改善させます。

・甘草(かんぞう):諸薬を調和させ、胃を保護します。また、桔梗と一緒に用いると咳を止めるはたらきがあります。

効果
体表付近の熱邪を表に出させ、熱を冷まして熱毒を取り去ります。

適応
発熱、軽い悪寒、汗が出ない或いは出ても少なめ、頭痛、口渇、咳、のどの痛み、舌の先端部が赤く苔は薄く白い或は薄く黄色い

全体的に冷やして熱を冷ます生薬が多い中に、寒熱のバランスをとるために温める生薬を加えています。日本では、かぜのひき始めによく使われます。かぜのひき初めといえば寒気がありぞくぞくする時に使う「葛根湯」が有名ですが、「銀翹散」は寒気が比較的軽く、のどが痛み、水分を欲するような場合に用いられます。


見過ごされがちな「湿」~藿香正気散(かっこうしょうきさん)
藿香正気散は宋の時代の『太平惠民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)』に登場する処方で、「藿香(かっこう)」という生薬を中心に構成されています。夏の多湿な時期に冷房にあたり過ぎて身体が冷えた後のかぜや、お腹の不調があるかぜなど、外から風寒の邪気を受け、体内に「湿」が溜まることによってあらわれる症状に用いられます。

生薬のはたらき
・藿香:温めるはたらきがあり、風寒の邪気を取り除きます。また芳香の性質なので、体内の「湿」を取り除くはたらきもあります。胃に「湿」が溜まると吐き気や嘔吐の症状が出るので、それを止めるはたらきがあります。

・半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ):気を巡らせ、「湿」を除きます。また胃のはたらきを整えて、吐き気や嘔吐を止めます。

・白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう):消化吸収を担当する「脾」を元気にして滞っている湿を動かすはたらきがあり、お腹の不調を改善する漢方薬に含まれていることが多いペアです。

・大腹皮(だいふくひ)、厚朴(こうぼく):気を巡らせて「湿」の滞りを解消します。

・紫蘇(しそ)、白芷(びゃくし):温めて風寒の邪気を発散させます。また、紫蘇は気を巡らせて吐き気を止め、白芷は「湿」を除くはたらきがあります。

・桔梗:肺の気を巡らせ、解表も化湿もします。

・甘草:諸薬を調和させます。以上の生薬に生姜と大棗を加えて煎じます。

効果
外から体内に侵入した風寒の邪気を発散させ、体内に溜まった湿を取り除きます。

適応
悪寒発熱、頭痛、みぞおちの辺りの痛み、胸部が詰まった感じ、吐き気、嘔吐、下痢、舌の苔が白くてべったりとついている


今回の新型コロナウィルス感染症の症状の中に咳や発熱の他、下痢や食欲不振のような胃腸の不調の他に全身の倦怠感などが挙げられていました。これらを湿による症状とみれば、治療薬として『傷寒論』の中の処方を組み合わせて作られた「清肺排毒湯」の中に藿香が含まれているのは、理にかなっていると言えるでしょう。

消化不良や下痢などの胃腸の不調、倦怠感、頭や身体が重いなどの不調があり、原因がわからない或いは長引いてなかなか改善しない場合は「湿」が原因かもしれません。体内に湿気が溜まって引き起こされる症状は真っ先に「むくみ」を考えがちですが、上に書いたような消化器の症状や身体の重さが出てきたときには要注意、まずは舌の苔の色や厚さでチェックしてみましょう。

次回は鈴木養平先生による小青竜湯と五苓散の話題です。ぜひご覧ください。

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原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。
家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。

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