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2018.05.203798view
夏を元気に過ごす ~胃腸を傷めずに暑さをしのぎ渇きを潤す

気の省エネ生活 vol.11

前回、夏の養生として、精神的にも身体的にも心(しん)を労わることが大切でそれが夏バテ予防にもつながることをお伝えしました(vol.10)。暑さとともに湿度が高くなっていくこれからの時期に労わりたいのは心(しん)だけでありません。夏をのびやかに楽しく過ごすためには“元気“が必要です。夏に”元気“を損なわないためには脾(胃腸)の元気を保つことも大切です。

夏は伏陰 ~お腹は冷えやすく消化はゆっくり

五臓(内蔵のはたらき:肝・心・脾・肺・腎)はそれぞれ季節や気候との関連があり、心(しん)は“暑”を苦手とし、脾(胃腸)は“湿“を苦手とします。脾(胃腸)は飲食物を消化吸収して気血というエネルギー・栄養を作りだし全身に運搬しており、湿が多いとこのはたらきが低下します。梅雨時期に食欲が低下する理由は湿と脾(胃腸)の関係です。

漢方では「肥甘厚味(ひかんこうみ)は湿を生じやすい」と言われます。肥甘厚味とは「脂っこいもの、甘いもの、味の濃いもの」のことで摂りすぎると体内に湿を生じ、脾(胃腸)が調子を崩しやすくなります。漢方では味にはたらきがあると考えられており、ウリ科や豆類に代表される“淡味“には利湿効果(湿を除くはたらき)があります。夏は味の濃いものは控えめに淡味であっさりしたものを中心に飲食しましょう。

また、脾(胃腸)は“寒“も苦手です。暑い季節には冷たいものを摂りがちですがこれも加減が必要です。『養生訓』(著:貝原益軒)の「夏の冷水」という項目に次のような記載があります。

夏は伏陰といって、陰気が体内にかくれているから、食物の消化がおそい。だからなるべく少なめに飲食をするがよい。温かいものを食べて脾胃をあたためるがよい。冷水を飲んではいけない。冷たい生ものはすべて良くない。冷えた麺も多く食べてはいけない。
(貝原益軒 『養生訓』 全現代語訳 訳:伊藤友信 講談社学術文庫)


「陰気が体内にかくれている」とはどういうことでしょうか。
陽の季節である夏、体の陽気は体表に近い四肢にあり活動性が高まっていますが、相対的に体の陰気は体内(臓腑)にあり冷えやすく、内蔵の機能は高くないのです。そのため、夏は消化が遅く、食べ過ぎに注意するとともに、冷たいもので胃腸を傷めないようにしましょうということです。

夏の冷えやむくみは脾(胃腸)の不調から

夏は汗をかいて体内の水を多く失うため水分補給は大切な養生です。しかし、昨今は夏の冷えや、水分代謝不良によるむくみ・体のだるさなどの不調も増えています。このような夏の体調不良は脾(胃腸)のトラブルが原因であることが多いです。

「体の熱を冷ますこと」と「水分を補給して潤すこと」は同じことではないのですが混同されがちです。「熱を冷ます+水分補給」=「冷たい飲みものを摂る」という対処になることが多く、そうすると “寒”が苦手な脾(胃腸)に負担がかかり体調不良を招きます。
脾(胃腸)のはたらきをできるだけ損なわずに暑さをしのぎ、適切に水分補給するには、次の3つを意識してみてはいかがでしょうか。

まず、水分はこまめに少量ずつ摂りましょう。
本来、体内の水不足を知らせるサイン(症状)が喉の渇きなのですが、渇きに気づきにくくなっていることもありますので喉が渇いたと感じなくてもこまめに水分摂取するようにしましょう。一気にたくさん飲むと脾(胃腸)が消化吸収できずに水が滞り、むくみやだるさの原因となりますので少量ずつ飲みます。また、できるだけ常温か温かい飲みものにして、冷たい飲みものは控えめにしたいです。

次に、旬のものを食べましょう。
食材は様々な性質を持ち、夏野菜と果物には熱を冷ますはたらきと水分を補い潤すはたらきの両方が備わっているものが多いです。日々の食事を通して自然に効果的に体の余分な熱を冷まし、汗で失った水を補うようにします。

最後に、保冷剤などで体の余分な熱をとる工夫をしましょう。
汗が乾かず体がベタベタしているようなときは、汗をかいてはいても熱は放出されにくい状態です。このとき冷たいものを飲んでも胃腸に負担がかかるわりに体の熱はとれにくく、めまいや吐き気などの不調が起こることもあります。
保冷剤あるいは緑茶の入ったペットボトルを凍らせたものを冷凍庫に常備しておき、外出から戻ったときや、室内に居ても一日数回、耳や首、脇の下などに数分当ててみましょう。全身のこもった熱を冷ますことができますので、暑さでほてって寝つきが悪いときにもおすすめです。

夏を元気に過ごすためには脾(胃腸)が鍵になります。また、季節と体の陰陽バランスでいうと夏は体内が冷えやすく内臓機能も強くはないです。体を知り自然と調和して上手に暑さをしのぎ、体を潤す水分補給をおこなっていきたいですね。

飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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