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2018.04.202704view
心(しん)を労わる夏の養生 ~こころはのびのび、汗をかいたら“気”も補う

気の省エネ生活 vol.10

もうすぐ立夏です。
夏は天地陰陽の気が活発に交流し合って、生きとし生けるものすべて花咲き実るように盛んに成長する季節です。精神的にはのびのびと、身体的には陽気を体外に発散させるようにし、気持ちも行動も鬱積することのないように過ごします。そのようにして夏における成長を特長とする天地の気に応じることができます。
夏の養生法に逆らってしまうと、五臓の心(しん)が傷み夏バテしたり、次の季節である秋にも不調があらわれることがあります。

夏は焦らない、慌てない、怒らない

ある勉強会に参加していたときの出来事です。昼食後、講義開始時刻に遅れたため走って教室に戻ってきた人に中医師の講師が「遅刻してもいいから走って来ないで」と心配そうに声を掛けました。
季節はもっとも陽が盛んな夏、時刻はやはり陽の盛んなお昼時です。この季節、この時間帯に負担がかかりやすい五臓は心(しん)です。心(しん)は暑さを苦手とします。また、心(しん)のはたらきのひとつに精神・意識を統括するという役割があり、焦りや動揺、怒り・驚きなどの感情は心(しん)を傷めると漢方では考えます。走ることはそもそも心肺機能に負荷をかけますので、夏に“焦って走る”ことが心(しん)へ与える負担は大きく極力避けたい行動です。

貝原益軒の『養生訓』に心気(しんき)を養うことの大切さが記されています。

~ 気を養う法 ~
心を静かにして騒がしくせず、ゆったりとしてせまらず、気を和かにして荒くせず、言葉を少なくして声を高くせず、大笑いせず、いつも心を喜ばせてむやみに不平をいって怒らず、悲しみを少なくし、どうすることもできない失敗をくやまず、過失があれば一度は自分をとがめて二度とくやまず、ただ天命にしたがって心配しないこと、これらは心気を養う方法である。
(貝原益軒 『養生訓』 全現代語訳 訳:伊藤友信 講談社学術文庫)


ギリギリ間に合う電車へ無理に駆け込む、遅刻しそうで走る、急いで食べてすぐ動くなどの行動は心(しん)へ負担をかけます。こころの平静を保つことは簡単ではありませんが、焦ったり慌てたりすることは出来るだけ避けたいものです。夏はいつも以上に時間と気持ちにゆとりを持って行動するよう心掛けたいと思います。

汗と一緒に“気“も出ていくことを知っておく

人の体は季節に応じて変化しています。春から夏にかけては毛穴が開き汗を出しやすいようにして夏の暑さに対応していきます。この体の変化は冒頭に書きました夏に天地陰陽の気が活発に交流し合うことに通じており、汗をかくことで陽気を体外に発散させ、同時に暑熱が体内に鬱積することのないよう自然に適応していると考えられます。

汗をかくとき、体からは汗とともに“気”も出ていっていることはご存知でしょうか?
中国医学の基礎理論と養生法がまとめられている『黄帝内経』の『素問』には次のような記述があります。

・陽気が内にこもると体が灼熱しているが、発汗することによって内に鬱した陽気をも発散してしま
うものである。
・暑気にあうと、陽気は汗とともに体外に出て行くのである。
・汗がとめどなく出ると、身体が弱って、陽気が燃え尽きてしまう。

発汗は体内の過剰な熱を冷ます生理機能ですが、汗をかき過ぎると体の水分だけでなく“気“も消耗します。夏は気持ちをのびのびさせて外向きに活動する季節ではあるのですが、一方で汗をかき過ぎる運動や行動は気を消耗することを覚えておきたいです。
汗をたくさんかいたときは失った水分を補給するだけでなく、昼寝などの休息や季節と体調に合った食事の仕方で気を補う養生もおこないましょう。

汗をかく夏は入浴の回数が増えることがありますが、長時間の入浴や一日に何度も湯船に浸かることは気をつけましょう。始めは気持ち良かったはずが、入浴後にぐったりしてしまうことがあるのは汗が出て気も消耗したためです。
貝原益軒は入浴について次のように述べています。

入浴は何度もしてはいけない。温気が高まって肌の毛穴が開き、汗が出て気がへるからである。古人は「十日に一たび浴す」と。もっともである。

自分の体力(気血の量)を考えて半身浴、足浴、シャワー、湯の温度、入浴時間などを選択しましょう。

五臓にそれぞれ管理する体液があり五液といいます。“汗”は心(しん)の液です。心(しん)のはたらきが弱ると汗の分泌は盛んになり、汗のかき過ぎは心(しん)の負担となります。
精神的にも身体的にも心(しん)を労わることが夏の養生のポイントですね。焦らずゆったり動き、汗をかいたら気も補うことを意識して過ごしましょう。夏バテ予防にもつながります。

飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]
静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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