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公開日:2025.12.21 更新日:2025.12.2117view

神経痛・関節痛・腰痛に効く~疎経活血湯

漢方薬のつぶやき vol.38

寒い季節に増す痛み
坐骨神経痛、関節痛、腰痛は寒い時期に起こりやすく、温かい季節は治まっていた症状が寒さによってぶりかえす傾向があります。

冷えは万病の元といわれますが、その所以として冷えることによる血行不良が挙げられます。寒い時期にひどくなる神経痛・関節痛・腰痛は、温めることと血行をよくすることが改善のポイント。

温めて、血行をよくすることで神経・関節・筋肉の痛みを改善する漢方薬はいくつかあり、その中のひとつが今回ご紹介する疎経活血湯(そけいかっけつとう)です。

痛みの3大原因
寒い時期に起こる神経痛・関節痛・腰痛の原因。その要素は大きく3つあります。

まず気候の冷えです。
漢方では「寒邪」といいます。冷えると筋肉が縮んでこわばり、血行がわるくなります。縮むことも、血行不良もどちらも痛みの原因に。寒邪の痛みは強いですが、温めると楽になるのが特徴です。

つぎに、血(けつ)の不足と滞り。
血の不足を「血虚(けっきょ)」といいます。また、血の滞りは血行不良のことで「瘀血(おけつ)」といいます。
血虚では疲れたときに痛みを感じやすくなり、瘀血では刺すように痛むのが特徴。血不足は結果として血行不良をもたらし、これら血にかかわる痛みは夜間につらくなる傾向があります。

3つめは湿気です。
気候や住居環境の湿気が体に悪影響を及ぼすレベルになると「湿邪」と表現します。冷えるとむくみやすいように、寒邪と湿邪は結びつきやすいので、寒い時期の痛みは湿邪も影響しています。
湿邪は関節とその周囲の筋肉に停滞し、こわばりや重たい感じの痛みを引き起こします。朝起きたときに痛みやこわばりが強いのが特徴。また、湿邪はベタベタとくっつく性質があるので、治りにくく慢性化する傾向があります。

17種類の生薬でマルチな効果
疎経活血湯(そけいかっけつとう)の「疎」は疎通、「経」は経絡、「活血」は血行促進を意味します。気血の通り道である経絡を疎通し、血を巡らせる処方です。
配合生薬は17種類!日本の漢方処方の中で生薬数が多い漢方薬のひとつ。

生薬を効能別にグループ分けすると、「血を補う」、「血を巡らせる」、「温める(寒邪を除く)」、「湿邪を除く」という構成です。
前述した痛みの原因、冷え・血不足・血行不良・湿邪のすべてに対応できるのが疎経活血湯の特徴です。

長期的に服用できて使いやすい
疎経活血湯の効能は、「体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛」。

急性の症状にも使用できますし、血を補う効果があるため慢性に経過している状態にも用いることができます。
寒い時期だけ症状がぶり返す場合、症状の兆候が出てきたらひどくなる前に早めに服用を始めて、冬の期間は服用を継続するという飲み方もできます。

血を補う生薬が配合されており、一部の生薬は胃腸が弱い人では服用後に胃もたれや食欲不振を感じることがまれにありますが、気になる方は食後に服用するとよいです。

最後に。寒い時期に起こる神経痛・関節痛・腰痛などは、寒邪や湿邪といった気候がきっかけではありますが、それら邪気にどの程度影響されるかは、体の抵抗力によります。
過労や睡眠不足、食事のかたよりがないようにして抵抗力を保持しましょう。そして日中も睡眠中も体を冷やさないように気をつけて、日々湯舟に浸かるか足浴をすることで寒邪を体にため込まないようにしましょう。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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