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公開日:2025.05.07 更新日:2025.05.0995view

『易経』の世界にふれてみよう

易経の叡智を人育てや自己の成長に生かす~vol.1

『易経』ってなあに?
東洋最古の書物、『易経』をご存知でしょうか。いまからおよそ2,700年前に成立したこの書物には、自然界や人生の道理が記されています。

私は漢方を仕事にしてきた中でこの書物と出会い、その奥深さに魅了され、様々な局面で、これまで幾度も心構えや行動の指針をもらってきました。

このコラムでは特に、子育てや人育て、自己成長のヒントにしてもらえたらいいな、という思いで易の六十四卦のエッセンスを紹介していきます。ぜひ楽しみながら読んでみてください。

漢方の基礎理論として陰陽論(※森羅万象は陰と陽の2つで成り立つとする考え方)がありますが、易はこの陰と陽の組み合わせによって、宇宙の普遍の法則を示すものです。
易は古代中国に発生した占いです。「あたるも八卦、あたらぬも八卦」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
陽爻(ようこう:⚊)と陰爻(いんこう:⚋)の3本の組み合わせから成る八卦を上下に2つ重ねると64通りの組み合わせがあり、六十四卦それぞれに、卦辞(かじ)、爻辞(こうじ)と呼ばれる言葉が付され、物語が展開されているのが『易経』です。後世に『十翼』と呼ばれる解説が加わって、哲学書としても読み継がれてきました。

『Book of Changes』~変化の書~
易経は私たちの在り方や日々の生き方に対し、壮大なスケール感で、いつでも惜しみなく様々な示唆を与えてくれます。易経に親しむことで、生き方のヒントが得られ、何かに迷ったときや困ったときの、判断のよりどころとなるでしょう。
私は、仕事や育児、自分や家族の人生の選択に悩み迷うときにそっと寄り添ってくれる相談相手として、『易経』を信頼しています。

『易経』を英訳すると『Book of Changes』となります。変化の書、ですね。
陰陽論では、この宇宙のすべての事象は、固定的な静止状態ではなく、動的な平衡状態の上に成り立っていると考えます。
「陰、極まれば陽となり、陽、極まれば陰となる」という通り、冬の寒さに耐えれば春の暖かさが訪れ、夏の暑さに耐えれば、秋の涼しさが訪れます。どんなに激しくとも止まない雨はなく、月は満ちれば欠けていきます。我々の人生もまた同じです。

迷いが生じた時や示唆がほしい時、卦を立て、1/64のストーリーを手元に、自分ごとを照らし合わせて考えを巡らし、適切と思われる行動を自ら選び取っていく。易経は私に、人間の本質である「哲学すること、考えること」の楽しみを教えてくれました。
卦を立てる時間は、自分に向き合う大切な時間でもあります。私にとってそれは、自分の状態に向き合い、漢方の考え方に基づいて漢方薬を選んだり、ライフスタイルをデザインしたりしていくことと重なります。本コラムで易経のエッセンスにふれ、「これ面白い!」と感じていただけたら、ぜひ易経の世界に飛び込んでいただき、「哲学すること」を共に楽しみましょう。

イメージ力を育てよう
漢方スクールで陰陽論や五行説をお伝えする時、私はいつも、陰と陽、また、木火土金水、それぞれの要素が象徴するイメージを大切にしてもらっています。
陰は暗く冷たく、下へと向かうもの、陽は明るく温かく、上へと向うもので、木はのびやか、火は燃え上がる、土は受けとめ変化させる、金は清潔、水は潤し冷ます、などなど。
それと同じように、易の学びにおいてはまず易の八卦を見ていただき、☰乾(けん):天、☱兌(だ):沢、☲離(り):火、☳震(しん):雷、☶巽(そん):風、☵坎(かん):水、☶艮(ごん):山、☷坤(こん):地、という8つの自然界の事象を、それぞれイメージでとらえていただくところからスタートします。父なる天と母なる地、など、人間にあてはめることでグッと身近に感じられるようにもなります。

次回以降、64通りのストーリーに絡めてコラムを展開していきますが、ぜひ、八卦それぞれのシンボルと、二つの卦の組み合わせについて、イメージを膨らませながら楽しんでみてくださいね。
次回は第一番目の卦、『乾為天(けんいてん)』です。龍の成長の物語を一緒に味わっていきましょう。

関連ワード
陰陽 易占 占い 陰陽論
林 美穂
林 美穂 - Miho Lin

[ニホンドウ漢方ブティック 梅田阪神店 上級相談員・薬日本堂漢方スクール講師]
お茶の水女子大学文教育学部卒業。中国人の夫との国際結婚をきっかけに、中医である義祖父の影響で東洋医学や薬食同源の考え方に出逢う。2011年に薬日本堂入社。相談員として臨床経験を積み、2020年までカガエ カンポウ ブティック京都河原町店の店長を勤め、京都の老舗料亭やホテルでの漢方セミナーも複数開催。現在は二ホンドウ漢方ブティック梅田阪神店にて上級相談員として女性のさまざまなお悩みに向き合いながら、漢方スクール大阪校にて講師を務める。四児の母。

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