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2017.06.013975view
家庭の名医はお母さん-暮らしの中に生きる薬膳

中医の玉手箱(11)

もう20年も前のこと、熱があるのに香港行きを強行した私を待っていたのは、現地に住む友人が煮てくれた薬膳スープでした。
「体調悪いのに来てくれるって聞いて、早く好くなるように昨日から煮込んだんですよ~」。
スープはとても優しい味がして、私が持っていた薬膳のイメージを一新しました。それまでは「薬膳」というのは漢方薬臭くて美味しくないものだと思っていたからです。

私は香港が好きで、1年に1回は足を運んでいます。
中医学の勉強を始めてから、漢方薬を扱う店や、生活の中に如何に中医学の手法が根付いているかが気になり始めました。香港では、各家庭ごとに家族の体調によって素材を選んで作るスープのレシピがあると前述の友人が話してくれたことを思い出しました。

材料は鶏肉や骨つきの豚肉、鶏の足、魚などにニンジン、大根、れんこんといった根菜類やとうもろこしなど。そこにクコやなつめ、百合根や杏仁といった生薬を組み合わせて長い時間煮込みます。
スーパーマーケットには、生薬類だけをパックにしたものが並んでいますし、上海街の厨房用具店では、スープを煮るための素焼きの鍋も売られています。深めの片手鍋のような形で、なかなか機能的です。

香港は、高温多湿という場所柄、街中を歩いていると「涼茶舗」が目につきます。
「喫茶店かな?」と思いきや、漢方薬の匂いがしてきましたよ~。ここで出される「お茶」は、体の熱をとり、のどの渇きを癒す生薬を煎じたもの。小さなどんぶりに入って出番を待っています。
お茶の効能を見ていたら、「排毒」と書かれています!これは立ち寄らずにいられませんね。

また、薬局の店先には熱を発散させて目をすっきりさせる菊花や桑葉(桑の葉を乾燥させたもの)、熱をとり利尿作用のある淡竹葉(イネ科のササクサの地上部分を乾燥させたもの)などが入った、手軽に涼茶を作るためのキットが並んでいます。
香港に足を運ぶたびに、生活の中に薬膳の方法が根付いていることを実感しています。

日本の夏も、香港ほどではありませんが高温多湿で熱と湿の影響を受けて体調を崩しがちです。
ゴーヤ、菊花などの苦味の食材や、体内の熱を冷ますキュウリ、トマト、ナス、冬瓜等の夏野菜、スイカやメロンなどの果物、余分な水を出す豆類やトウモロコシのひげなどで夏を健康に過ごしたいですね。
ただし、元々冷えのある方は摂取する量に気をつけて、冷えすぎに注意しましょう。

『中医の玉手箱』の連載も今回が最終回となりました。1年間お付合いいただき、ありがとうございました。次回からは飯田先生にバトンタッチします。お楽しみに~!

原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。
家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。

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