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公開日:2024.09.21 更新日:2024.09.21607view

赤く地図のような蕁麻疹~消風散

急にあらわれて自然と消える
突然あらわれる蕁麻疹。痒みとともに、皮膚の一部分が赤くくっきりと盛り上がり、人によっては腕、首、顔、太ももなどと部位が移動。多くは数十分から数時間以内に跡を残さずに消えていきます。

特定の刺激で起こるものや何らかの病気があって生じる蕁麻疹もありますが、蕁麻疹の約7割は明らかな原因が見当たらない特発性のものであるといわれています。
今回は、蕁麻疹に使われる消風散(しょうふうさん)を紹介します。

風を消す薬
消風散は「風を消す薬」と書きます。言い換えると「風という邪気を取り除く」薬です。風とは何か?
自然界の風を思い浮かべてください。風は急に吹き、場所によって強く吹いたり、向きを変えたりと変化しやすい特徴があります。
この特徴、蕁麻疹の症状に似ていると思いませんか?

漢方で皮膚の症状を診察する際に、自然現象になぞらえて表現することがあります。人は自然そのものですから、外界に風が吹くように体の中にも風が生じると考えます。

蕁麻疹は急に出て症状の部位が移動し、短時間でさっと消えていきます。
このような特徴を漢方では風(ふう)の症状と捉え、風を取り除く働きをもつ消風散が使われます。

赤いのは熱、盛り上がりは湿
皮膚の症状には風(ふう)のほかに熱や湿という現象もあります。

患部が赤みを帯びているとしたら、それは熱をもっている証拠です。
また、水疱ができたり、ジュクジュクと分泌液が出ている状態は湿と考えます。蕁麻疹で水泡や分泌液が出ることはあまりない思いますが、膨疹(ぼうしん)といってぼこっと盛り上がって境目がくっきりしている状態も湿と考えます。

消風散には、熱と湿の邪気を取り除く生薬も配合されていますので、「風」「湿」「熱」の3つを除去して皮膚の症状を改善します。

蕁麻疹にもいろいろな症状がありますのですべての蕁麻疹に消風散を使用するわけではありません。痒みがあって、赤く、くっきりと盛り上がり、境目がまるで地図のように見える蕁麻疹に消風散は効果があります。

消風散の効能と服用方法
消風散の効能は「かゆみが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの次の諸症:湿疹・皮膚炎、じんましん、水虫、あせも」と表記されます。

痒みは「風」、分泌物は「湿」、熱感や赤みは「熱」。これらを除去する生薬のほか、皮膚の修復に必要な栄養である「血(けつ)」を補う生薬も配合されています。

消風散は蕁麻疹が出たときに頓服的に服用することができます。また、通常は数時間以内に消える蕁麻疹ですが、繰り返し出て慢性化しているようなら消風散をしばらく継続して服用します。

慢性に続く蕁麻疹は疲労やストレス、飲食の仕方がきっかけとなっていることがあります。生活養生も併せておこない、蕁麻疹がある程度落ち着いたら消風散はお休みして生活養生は継続しましょう。
蕁麻疹が出ないよう体質改善する漢方薬に切り替えていくこともできますので、漢方専門の医療機関や薬局に相談されるとよいでしょう。


今回は蕁麻疹をテーマに消風散を紹介しました。
最後に付け加えますと、消風散は蕁麻疹に限らず一般的な湿疹、アトピー性皮膚炎、夏に悪化する皮膚炎などにも使われます。漢方薬は病名に対して決まるのではなく、赤みや乾燥などの具体的な症状によって選びます。このことは漢方薬の適切な使用のために大切な考え方です。

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飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

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