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公開日:2024.09.07 更新日:2024.09.071117view

要らないものを出せるからだを目指す動養生~金魚運動

しなやかに巡るからだをつくる~動養生のポイント~Vol.4

人間は考える葦である
「人間は考える葦である」とは、フランスの科学者であり哲学者でもあるパスカルの言葉です。この言葉が意味するのは、人間は自然の中でごく弱い存在でありながらも、考えることによって偉大な存在にもなる、ということです。

葦の茎は中が空洞のストロー状になっていて、その根茎は漢方では「蘆根(ろこん)」という生薬として知られており、利水(利尿)や解毒のはたらきがあります。日本では葦は河川や水田などの水辺に自生し、汚水を浄化し水質をきれいにしてくれるそうです。

人体を漢方的に考える時の“五臓六腑”の“腑”とは、胃、小腸、大腸などのことです。“腑”は消化吸収と排泄に関わり、中が空洞で口から肛門までひとつながりの一本の管。この点においても、「人間は葦である」と言えるかもしれません。

健康であるためのポイントとして、管状の“腑”に未消化物や排泄物などの内容物を長時間滞留させないことがあげられます。今回はこの点に着目した運動養生法を紹介しましょう。

背を丸め歪みを深めるスマホ生活
人間が葦であり一本の管であるとするならば、二足歩行に進化した人間は地面に対して垂直に立つ管。口という入り口から入ってきた飲食物を受け入れ、消化吸収し、肛門という出口からすんなりと排泄するには、なるべくまっすぐな姿勢の方が、内容物の滞りは生じなさそうです。

しかし、近代化が進む中で我々は、自動車やエスカレーターなどに頼りきり、自分の足で歩き回ることが少なくなりました。パソコンやスマートフォンを前にして背を丸めていることが増え、重たい頭を細い首で支えるために、姿勢はまっすぐとはいかず歪んでおり、背骨周りの筋肉は固まりガチガチです。
これでは、消化吸収も排泄も滞りがちになるのも無理はありません。背骨周りに集中する自律神経系がすんなり機能せず、乱れやすくなるのは必然のように思われます。

同じ脊椎動物の魚類も爬虫類も、ネコなどの哺乳類も、しなやかに背骨をくねらせることで、軽やかに動き回ります。それによって、食べては出す、という生命活動をスムーズにこなしているのです。
そこで、「日頃忙しくて運動をする間もない」というあなたに、金魚が水中を泳ぐような動きをまねる金魚運動をお勧めします。背骨周りの筋肉の緊張をとり、身体の歪みを調整し、全身の神経機能を整え、また、腸管に振動を与えて、排泄を促してくれます。

~金魚運動の方法~
①仰向けに横たわり、組んだ手を首の後ろにあてる。

②両足のつま先は上に向けてかかとをしっかりと地面につけ、全身をほぐすように腰を左右にふる。

魚がしなやかに泳ぐ姿をイメージして
金魚運動は、水の中を気持ちよく泳ぐ魚になったつもり、あるいは、自分のからだが水のつまった袋で波打っていく、というようなイメージでうねり動作をしてみましょう。毎日1~2分ずつできると良いでしょう。
二人で行う場合は、相手に足をもってもらい、左右にゆすってもらいます。激しい動きはせず、くれぐれも無理のない範囲で静かにゆすってもらいましょう。

背骨がしなやかになれば、全身の循環がよくなり、肩こりなどの痛みも生じにくくなります。
漢方で目指す健康な状態とは、滞りなく“巡る”からだです。排泄物も速やかに出せるよう、金魚運動で腸に刺激を与え、蠕動運動を促していきましょう。要らないものを出せる軽やかなからだになるために、日々少しずつ続けてみてくださいね。

関連ワード
運動 動養生 体質改善
林 美穂
お茶の水女子大学文教育学部卒業。中国人の夫との国際結婚をきっかけに、中医である義祖父の影響で東洋医学や薬食同源の考え方に出逢う。2011年に薬日本堂入社。相談員として臨床経験を積み、2020年までカガエ カンポウ ブティック京都河原町店の店長を勤め、京都の老舗料亭やホテルでの漢方セミナーも複数開催。現在は二ホンドウ漢方ブティック梅田阪神店にて上級相談員として女性のさまざまなお悩みに向き合いながら、漢方スクール大阪校にて講師を務める。四児の母。
ニホンドウ漢方ブティック梅田阪神店
薬日本堂漢方スクール

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