- 齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]
1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。
夏に増える痛み?!肩こり、生理痛、脚のつり
漢方であなたを応援vol.28「夏の痛み対策」
痛みは冬の専売特許ではない!
関節痛や腰痛、手足のしびれなど、痛みの相談は一年の中で冬に集中するイメージがあります。
実は梅雨や夏にも痛みでお困りの方はたくさんいらっしゃいます。なぜでしょう?
漢方には「不通則痛(ふつうそくつう)」という考え方があります。「流れが悪く通らないと痛みにつながる」という意味で、血行不良、運動不足、ストレスなどによって体の成分である気血水(きけつすい)が滞ることで痛みが起こります。
寒い冬は全身の筋肉が縮こまり、動きが鈍って痛みが生じます。手袋を忘れて外出すると手がかじかんで痛くなる、これが冷えによる痛みです。温めると血流が良くなり痛みも解消します。
逆に梅雨時期は体内の水分代謝が鈍り、水たまりが多く発生して痛みやすくなります。朝、目覚めた時から手足がむくみ、指がこわばって痛い、これが水たまりによる痛みです。トイレに行き、身体を動かして水流がよくなれば痛みがおさまります。
では夏に痛みを起こす原因は何でしょう?
発汗に冷風、冷飲が加わると夏の痛みに
うだるような暑い夏、体内の熱を逃がすために汗をかきます。毛穴が開き、体内の水分を外に出すのが発汗。毛穴が開いている時は外界の邪気(病気の原因になるもの)が侵入しやすいので、開きっぱなしはよくないと想像できるでしょう。
■発汗時に邪気が侵入
汗をかいた直後に冷風に当たると、風邪(ふうじゃ)と寒邪(かんじゃ)が一緒に侵入してきます。特に暑さ対策で肩や首元を開けていると、頭や首・肩のこわばりや痛みが生じます。タンクトップで過ごしている方などは上腕にも鈍い痛みが生じますので、羽織るもので冷風の直撃を避けることが大切です。
毛穴が開いている時は、体を守る「免疫力」も低下しがち、様々な不調が起こりやすいので注意しましょう。
■発汗で潤い消耗
汗で体内の水分が奪われると、尿量が減る、口やのどが乾く、肌が乾燥して手や顔のしわが目立つなどが起こります。尿量が減れば、膀胱炎、尿道炎などの不調にもつながるので、こまめに水分を補充して潤すことが大切です。
先ほど「不通則痛」を紹介しましたが、「不栄則痛(ふえいそくつう)」という言葉も痛みに関する表現です。栄養物質である血(けつ)が不足すると最終的に血行不良がおきて痛みにつながります。汗も血も体内では液体なので、発汗が多いと血も不足し痛みにつながるわけです。
血が栄養を届けている筋肉では、汗が多いと血も不足して手足がつります。熱中症で指先がしびれるのも同じことが考えられます。
また血は女性の健康に大きく関わり、不足すると月経痛や月経不順が起こります。特に冷たい飲み物や冷やす食材が多すぎると、下腹部や腰が冷えて痛みが出やすくなります。
汗の調整と潤い補充
夏の痛みと汗の意外な関係がわかったところで、夏の痛み対策を考えてみましょう。大切なのは汗の調整と潤い補充です。
①普段から汗を調整
・外気温が高い場合は、おでこや首元を冷やして発汗しすぎないようにする
・半身浴などで余分な水分は抜いておく
・睡眠不足は自律神経失調による多汗をおこすのでしっかり眠る
②食事で汗を調整
・酸味は汗の出すぎをおさえる・・・梅干しやレモンなど
・適度な辛味は毛穴の開閉を助ける・・・みょうがやシソ、生姜など
・酸味と甘味を一緒にとって潤い補充・・・梅ドリンクやビネガードリンクなど
・赤色、黒色食材で血を補う・・・レバー、ベリー系ドライフルーツ、黒豆など
・常温の水分を少量ずつこまめにとって潤す
汗が多すぎるとミネラルを消耗し、しびれにつながることがあります。塩分もしっかり補充して痛みの予防と緩和に努めましょう。加えて、痛みのある部分は、やさしくさするなどしてほぐしましょう。
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