漢方ライフ読む(コラム一覧) > 心も身体も整う食べ方~よく噛んで食べる
公開日:2023.03.07 2116view

心も身体も整う食べ方~よく噛んで食べる

体質と生き方を左右する食べ方~食養生のポイントVol.1

はじめまして。梅田阪神店の林と申します。店舗で漢方相談をお受けしている40代、4児の母です。
自分や家族の健康にとって、食が大事であることはよくわかっているけれど、なかなかはじめの一歩が踏み出せないというあなたへ、今回から全6回で、食養生のポイントをお伝えしていきます。
このコラムを読んでその日からでも実践していただけるように「よく噛んで食べること」を第1回目のテーマにしました。
身近な一歩から、健やかで康らかな心と身体をぜひ一緒に目指していきましょう♪

今年度の健康診断、もう受けましたか?
バリウム検査ではなく胃カメラを選択し、「内視鏡のモニターでご自身の胃壁を見た」という方も中にはおられるかと思います。
普段なかなか目にすることはないけれど、毎日健気に働いてくれている愛おしい私の消化管。
思っていた以上に淡い優しい色をして、繊細な血管が透けて見えたりしていて。
「いたわりたい、もう負担をかけたくない」という気持ちにかられるやもしれません。

そして当然といえばそうなのですが、胃に歯はついていない!
口から始まって食道、胃、小腸、大腸、そして肛門へというように、消化管は上から下へと繋がっている一本の管であり、各部位が各々の仕事をきちんと果たしてこそ、飲食物から無理なくムダなく栄養や水分が消化吸収され、その粕が便として肛門から出てきます。
その一連の流れのどこかで働きが不十分であれば、あとに控える部位にツケが回ります。
食べ物が口内にあるうちに、歯を使って十分に噛み砕きすりつぶしてから食道を通さなければ、喉元は苦しく詰まり、胃は必要以上に多くの胃液を分泌しなければならないなど、後続に無理をかけてしまうわけです。

シュークリームの行方
目の前にとても美味しそうなシュークリームがあるとしましょう。

口に入れてゴクンと飲み込んでしまえば、もう“なかったこと”になるのでしょうか。
いえ、もちろんなかったことにはなりません。見えないところで本人の無意識のうちに、消化管の胃より下の各部位たちが、その後も一所懸命に働き、消化吸収してきっちりと私たちの血肉にしてくれているのです。

食べたものが私たちの血になり、一つ一つの細胞の元となって身体を構成し、その細胞がまた次の細胞に生まれ変わるまでには、平均すると大体半年ほどを要すると言われます。つまり、半年ほどは食べたものの影響が残るということです。(えらいこっちゃ!!)
特に糖質や脂質のようなあまくて美味しいものは、「もっともっと」と欲に任せて、ろくに嚙まずに短い時間のうちに食べ過ぎてしまうかもしれません。過緊張が続いた時、疲れた時に、ホッとしたくて癒されたくて…
食べたいのに健康のために我慢するというのも、つらさの上乗せをしているようで満たされないですね。

間食に限らず普段の食事でもそうですが、自分が生きていくために他の生命をいただいていることに感謝しながら、一口ずつじっくり時間をかけ、よく嚙んで食べれば、満腹中枢も刺激され、我慢することなく自ずと「これ以上はもういらない」と、足るを知ることができます。
しかし実際のところ、どう取り組んでいったらいいのか…。

箸置きのススメ
まずは手元に箸置きを用意するといいでしょう。
ご飯もおかずも、一口入れては箸をおき、30回以上噛む。コスト不要ですぐにでも始められる養生法です。
ただ、根気はいります。口では簡単に言えても、30回以上噛むって、噛み応えのないやわらかいものばかり食べ慣れている現代の食生活ではなかなか容易ではありません。だいたい、一口ごとに30回数えること自体にすぐに飽きてしまいます。

そこで、先ほど述べた「感謝」の気持ちを言葉に表してみるのが良いと思います。これは、先輩が漢方スクールの生徒さんから共有いただいたアイディアです。
一口ごとじっくり噛みながら「ありがとう」という言葉を頭の中で6回繰り返せば、5文字を6回でちょうど30回になる、と。
自分が生きていくためにいただいているこの生命へ、さらにこのお米や肉や野菜を育て届けてくれた方々へ、そしてこの食事を用意してくれた人への感謝の気持ちを込めることができます。
小さな子どもにとっては、同じ言葉を6回も唱えるのは割と大変ですし飽きてしまうので、「おいしいな」を3回と「ありがとう」を3回というふうにアレンジしてもいいですね。
我が家の2歳の末っ子がもう少し大きくなったら、そう伝えようと思っています。

いまこのコラムを読んでくださったあなたも、まずは一か月、よく噛むことから始めてみませんか?
手始めにご自身は一口で何回噛んでいるのかを知るために、今夜の晩ご飯での噛む回数を数えてみてください。
そして、いきなり30回とはいかなくとも、現状+10回(=ありがとうを2回分)噛むようにしてみましょう。

毎日できなくても、もちろんいいんです。思い出したとき、気持ちが向いたときにチャレンジしてみてくださいね。そしてまた次回、こちらでお会いしましょう。

次回のテーマは「生命力をそのままいただく食べ方~丸ごと食べる」です。どうぞお楽しみに!

林 美穂
お茶の水女子大学文教育学部卒業。中国人の夫との国際結婚をきっかけに、中医である義祖父の影響で東洋医学や薬食同源の考え方に出逢う。2011年に薬日本堂入社。相談員として臨床経験を積み、2020年までカガエ カンポウ ブティック京都河原町店の店長を勤め、京都の老舗料亭やホテルでの漢方セミナーも複数開催。現在は二ホンドウ漢方ブティック梅田阪神店にて上級相談員として女性のさまざまなお悩みに向き合いながら、漢方スクール大阪校にて講師を務める。四児の母。
ニホンドウ漢方ブティック梅田阪神店
薬日本堂漢方スクール

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

ページトップへ