- 荒毛 克麻 - Katsuma Arake
[カガエ カンポウ ブティック パルコヤ上野店店長・薬日本堂漢方スクール講師]
自身の体調を崩した事をきっかけに、薬日本堂漢方スクールにて漢方を学び始める。養生・漢方の魅力を多くの方に伝えたい想いから、2012年薬日本堂に入社。現在はカガエ カンポウ ブティック パルコヤ上野店店長として、漢方相談を行いながら、スクール講師を務める。ダイエットや美容の相談を得意とし、笑顔になれるカウンセリングに定評がある。テレビ新潟では、漢方コーナー「おしえて漢方」の出演経験も持つ。
悩み過ぎは禁物!9-11時の過ごし方
漢方と体内時計~健康を導く24時間の過ごし方 vol.7
思い悩む性格は“脾”が影響している!?
古代の中国人は、自然の中から法則を発見し、様々な面で活かしていました。
その中のひとつに五行説があります。
五行配当表
上の図で、土の列を縦に見てみましょう!
この縦の列の項目はすべて繋がりがあり、“脾と胃”は消化吸収の働きを連携して行う臓腑です。脾の働きが弱ると、肌は黄色くくすみ、口元に不調があらわれ、肌肉(きにく=肉体)が痩せたり太ったりします。
またクヨクヨと思い悩んでいると“脾”の消化吸収の働きを弱めてしまいます。
私自身、学生の頃に「過敏性腸症候群」を患い、腹痛と下痢に約5年ほど悩んでいました。
当時を振り返ると、クヨクヨと思い悩む性格でしたが、漢方薬を飲み体調が良くなりました。
このようなきっかけから漢方を学び、“脾と思い悩む”ことが繋がっているのを知り、「性格は体からのサインだったのか!」と当時驚いたのを今でも覚えています。
思い悩み・クヨクヨしてしまう性格の人は、漢方的に捉えると“脾”に不調があらわれやすくなります。
今回ご紹介する「巳(み)の刻(9-11時)」は、“脾”が担当する時間帯です。
漢方で考える“脾”の働きを見ていき、思い悩みに左右されないようにしていきましょう。
漢方で考える脾の働き
“脾”の働きは大きくは4つあります。
①運化(うんか):食べたものを消化吸収し、体に必要な“気・血・水”などに変化させ全身に運ぶ働き。この働きが弱ると、食欲減退、消化不良、腹痛、軟便などの胃腸のトラブルが出てきます。
②昇清(しょうせい):“気・血・水”を上半身に送る働き。
この働きが弱ると、無気力・疲れやすい・むくみやすく・食後に眠くなるなどが出てきます。
③昇提(しょうてい):内臓を正しい位置に保つ働き。
この働きが弱ると、胃下垂・脱肛・子宮下垂などが出てきます。
④統血(とうけつ):“血”が漏れ出ないようにする働き。
この働きが弱ると・・・血尿・血便・不正出血・月経量が多くなる・鼻血などの出血症状が出てきます。
また上の図の通り、“脾”は「思い悩む」感情に強く影響を受けるので、悩みすぎないことが“脾”の働きを活かすために大切です。
【脾の働きを活かす巳の刻(9-11時)の過ごし方】
①朝食をしっかり摂ろう
前回書いた胃の時間帯(Vol6)で食事を摂っておくと、体に必要なパワーを“脾”が作り出してくれます。
②朝日を浴びよう
朝は心も体も活発な時間帯!太陽から気(エネルギー)をもらいましょう。
③悩みは禁物
“悩みすぎ”は“脾”を弱めます。悩みが出てきたら、窓を開けて深呼吸。もしくは軽く散歩をして気分転換しましょう!
とはいえ現代社会はいろいろな情報が溢れていて、何が正しいのか判断するだけでも悩んでしまいますよね。
悩んだ時には、丹田呼吸!
丹田呼吸は、瞑想や武道で用いられることから、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
瞑想は世界的にも話題で、YouTubeやNetFlixにやり方の動画が多く上がっています。
丹田(たんでん)は、おへそのやや下、お腹の中にあり、古代中国医学では,“丹”は不老不死の薬,“田”は産出する土地を意味します。
日本では丹田=腹として、「腹を割って話す」「腹が据わる」などの言葉があり、腹で考え、物事に動じない精神力を鍛える武道の鍛錬法としても行われています。
【丹田呼吸法のやり方】
①両脚を組み、あぐらをかいて座る。(椅子に座ってもOK)
②両手を重ね、女性は右手・男性は左手を自分の丹田(たんでん)の場所 に合わせます。
③頭部の百会(ひゃくえ※)を、天上から吊っているイメージで上に向けます。
※百会(ひゃくえ)頭のてっぺんにある少し凹んでいるところ
④呼吸は鼻から息を吸い、丹田に溜めるようにします。吐くときも鼻から吐くようにします。
・呼吸は“細く・長く・深く”。お腹は吸う時に膨み、吐く時には縮むようにしましょう。
・呼吸中に、悩み事や雑念が出てきたら、すぐに答える。もしくは呼吸に意識を集中しましょう。
・“気”は約30分で、体を一周するといわれます。(『黄帝内経』より)
9~11時の巳の刻に30分ほど時間をかけて行うのが理想的です。(最初は短い時間でもOK)
丹田呼吸のポイントは、呼吸によっておへその下の“丹田”に“温かい気”が流れているイメージを持つことです。
瞑想やヨガをしている方はよく「呼吸を観る」と言います。一週間ほど意識的にやってみると違いが実感できます。
私は丹田呼吸を行うようになってから、腹が据わって悩みづらくなり、悩みが少なったことで胃腸の悩みが無くなりました。
私は仕事で悩みに左右されないようにするために、9-11時の通勤中に座れるときには電車で行っていますよ。
次回は、午の刻(11-13時)!
「心おだやかに過ごすのは、昼寝が鍵を握る!?」
担当する心経とその時間帯の過ごし方について語ります。お楽しみに。
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<共著>
- 原口 徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。
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