漢方ライフ読む(コラム一覧) > 不眠症の漢方薬①~服用方法の“あるある”
公開日:2022.02.15 更新日:2022.02.157204view

不眠症の漢方薬①~服用方法の“あるある”

眠りと漢方~眠れぬ夜のために vol.6

夜だけ1回服用?服用方法の誤解
先日、不眠症で漢方薬を服用している人と話していたところ、夜あるいは寝る前に1回服用しているとのこと。
不眠症に使う漢方薬の飲み方について、このような話はたびたび耳にします。
漢方薬によくある誤解のひとつです。

日本の伝統医療である漢方薬。
ドラッグストアにも陳列されて身近に感じられる一方で、依然として効能や服用方法は一般の人には謎が多く、近くて遠い存在ともいえますね。

今回は不眠症で漢方薬を服用する際の“あるある”を、次回(2月25日)はドラッグストアでも見かける不眠症に用いる漢方薬の種類についてお伝えします。

「眠らせる」のではなく「自然に眠れる」を目指す
不眠症で使う漢方薬であっても、服用のタイミングは基本的には一日3回です。
一般的な漢方薬の服用回数と同じなのです。

西洋医学の睡眠薬といえば寝る前に服用することがほとんどだと思います。
なぜ漢方薬は一日3回服用するのでしょうか?

それは身体に対するはたらきかけが根本的に異なるからです。
作用の方向性が異なるといってもいいでしょう。
漢方薬の場合は、「眠らせる」というより、「自然に眠れるように心身を整える」はたらきをします。

不眠の原因は気血水(きけつすい)の不足や滞り、五臓の不調など身体の陰陽バランスが崩れることです。
その原因を根本的に調整して本来の眠りを回復させていくことが漢方薬の効能です。

そのため、寝る前に1回だけ服用するという飲み方ではなく、一日3回定期的に服用します。

日中眠くなったりしない?
一日3回服用するのが基本であることを話すと、「昼間に眠くなったりしないのか?」と心配される人がいます。

繰り返しになりますが、漢方薬は「眠らせる」薬ではないので、服用直後に眠気が差したり、パタンと眠ったりするわけではありません。
不眠の原因となっている身体のアンバランスを整えながら、その人にとっての自然な眠りに導くのが漢方薬の特長です。

また、効果のあらわれ方はゆっくりかもしれませんが、睡眠薬で起こりうる「朝起きにくい」「日中ボーっとする」「気を抜くと居眠りしてしまう」などの心配がないのも特長のひとつです。

漢方薬の併用で睡眠薬を減らせることも
病院で睡眠薬を処方されて服用していた人が、漢方薬を始めると同時に睡眠薬を自己判断で止めてしまうことがあります。
漢方薬の効果があらわれるまでの期間は個人差がありますので、睡眠薬を急にやめると眠れなくなる可能性があります。

漢方薬と睡眠薬は併用できることが多いので、専門の人に相談した上で併用し、様子をみていくことが大切です。
漢方薬を併用することで睡眠薬の量を減らせるケースは多いですよ。

次回(2月25日)は不眠症に使われる漢方薬の種類や特徴を紹介します。

飯田 勝恵
飯田 勝恵 - Katsue Iida[薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師]

静岡県立大学薬学部卒業。1998年薬日本堂入社。約10年間の臨床と店長を経験。店舗運営や相談員教育などに携わり、その後「自然・人・社会に役立つ漢方の考えをより多くの人に伝えたい」と講師として活動。薬だけではない漢方の思想や理論に惹かれ、気功や太極拳、瞑想なども生活に取り入れながら漢方・養生を実践している。

漢方スクールでの担当コース・セミナーはこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

ページトップへ