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公開日:2015.07.01 更新日:2020.05.2222262view

柿のへたでしゃっくりが治る!? ~柿蒂湯(していとう)

知っておこう!漢方薬の意外な力 vol.2

前回は見えない「気」の塊のお話をしました。「気」をめぐらせ、塊を作らないように過ごしていますか?今回は、前回に引き続いて「気」の塊のお話です。

漢方薬は、身近なものが原料として用いられています。普段食べているヤマイモやシソ、シナモン、生姜などがそうです。ヤマイモは胃腸の調子を整えてくれるので、元気を補う漢方薬の中に入っています。シソは辛味と芳香があり、胃のむかつきなどを解消してくれます。シナモンは身体を温める働きがあるので、かぜ薬や胃腸薬に配合されています。
けれど中には、「そんなものまで使うのか?!」と思うような素材もあります。例えば、カキの貝殻やセミの抜け殻など…そんな‘おもしろ生薬’のひとつをご紹介しましょう。

皆さま、柿はご存知ですね。柿はさまざまな部位を利用します。葉はお茶として民間で愛用され、ビタミンCが豊富なためお肌や血圧によいといわれています。生で食べる果肉は肺を潤してのどの渇きを癒すので、乾燥する秋のから咳などにもよいのです。昔は干したものを甘味料として貴重に取り扱ったそうです。と、ここまでは普通なのですが、漢方のおもしろいところは、柿の「へた」を使うことです。

柿のへたを使った漢方薬は「柿蒂(してい)湯(とう)」といって、配合生薬は柿のへた、生姜、丁子(クローヴ)の3種類。これを土瓶でぐつぐつ煮詰めて飲むという、いたってシンプルな処方。実はしゃっくりの特効薬なのです。しゃっくりは、横隔膜(または他の呼吸補助筋)の痙攣によって起こるのですが、漢方では「気」の塊が逆上したものととらえます。柿のへたは、「気」の塊を引き下ろしてしゃっくりを止めるのです。

私が新人の頃に勤務していた薬局は、大きな病院が近所にあり、時々看護婦さんや患者のご家族が「柿のへた、ください!」と走って来られました。皆さん経験があると思うのですが、しゃっくりは意外と体力を消耗しますね。入院患者さんは横になっている時間が長いので、体力が不足しています。何かの拍子にしゃっくりが始まって長引いてしまうと、健康な方よりもダメージは大きいのです。だから、柿蒂湯を使って止めるわけです。

しゃっくりを治す薬があると聞いてびっくり!しかも柿のへたで治るなんてびっくり!!という方もいるかもしれません。漢方の世界は、まだまだ不思議が詰まっているので、引き続き興味を持って『漢方ライフ』をお読みくださいね。
次回は夏バテに用いる処方のお話「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」です。お楽しみに!

齋藤 友香理
齋藤 友香理 - Yukari Saito[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年北海道生まれ。東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務めていた。多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。分かりやすい解説と気さくな人柄で、幅広い年齢層から支持されている。

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