中医の玉手箱⑦

読者のみなさん、新年快楽(新年おめでとう)!恭喜發財(お金が儲かりますように)!万事如意(すべて意のままに進みますように)!
あら、今頃新年の挨拶?と思われた方もいるかもしれませんね。

中華圏では農歴と呼ばれる太陰暦によるお正月がメインで、今年は1月28日が農歴の正月1日となりました。2月11日までの2週間は日本の松の内のような「お正月期間」になります。「今年は」と書いたのは、毎年1日がいつになるかが違うためです。

新しい年が来るというのは嬉しいもの。
日本ならば大晦日には年越しそばを、お正月にはおめでたいいわれのあるおせち料理を食べて健康と長寿を願いますが、中国では除夕と呼ばれる大晦日にあたる日に家族が集まって食卓を囲み「年夜飯(ニェンイエファン)」と呼ばれるごちそうを食べます。
日本の昆布巻きは「喜ぶ」に、黒豆は「まめで達者で」に暮らせるようにと願いが込められていますが、年夜飯も「魚と余(余裕がある):ユィ」「鶏と吉(大吉):ジー」のように、同じ発音の食材を使ってめでたさをあらわすものとなっています。

さて、年末年始の食べ物といえば「餃子」があります。
日本では焼き餃子が中心ですが、中国では餃子と言ったら茹でて食べる水餃子を指します。餃の字は「交(ジィァオ)」と発音が同じ、子は「子(ね)の刻」を意味し、新しい年へと交代する時に食べるもので、具を包んだ餃子の皮の端を合わせて丸くした形は、昔の金でできたお金の形に似ているため「お金が儲かりますように」という願いが込められています。

ところでこの餃子、漢方の名医、張仲景が生み出したものと言われています。
「医聖」と呼ばれ、中医学の臨床の基礎を築いたといわれる名医の張仲景は、今の河南省の出身。

故郷の貧しい人々が寒さで耳が凍傷になっても手当てができない状況を目の当たりにし、羊肉や唐辛子、身体を温める生薬類を一緒に煮込んだのち、羊肉を取り出して刻み、小麦粉で作った皮で包んで耳の形にしたものをこしらえて、先に煮ておいたスープとともに人々に食べさせました。
これによって人々は身体が温まり、凍傷も癒えたといわれています。冬至や新年といった寒い季節にアツアツの水餃子を食べることは理にかなっているといえますね。

身体を温めるといえば、張仲景の有名な処方に「当帰生姜羊肉湯」があります。
冷えによる腹痛に用いますが、薬膳スープとしてレストランのメニューに実際に存在していてもおかしくないかもしれません。古人が病気になったとき、あるいは健康を維持するために、自分の身の周りにある食材を役立ててきたことがわかります。

最後になりましたが、日本のおせち料理のメニューも、薬膳的に見てみるとなかなか興味深いものがあります。
昆布・黒豆などの黒色食材、海老は冬と関係のある五臓の「腎」によいとされる食材ですし、栗きんとんの栗は腎を補い、さつまいもは気を補う黄色い食材です。おめでたい上に身体にいい食材の宝庫だったのですね。

私たちも冬の間にアツアツ餃子で身体を温め、黒い食材などで腎を補い気を養って、もうすぐやってくる春に備えましょう。

原口徳子 - Noriko Haraguchi[中医師・薬日本堂漢方スクール講師]
1963年仙台市生まれ。高校生の頃に太極拳を学び、経絡や気の流れに興味を持つ。
家族の転勤で2003年から10年ほど中国に住む間に、上海中医薬大学で中医学と鍼灸推拿学を7年間学ぶ。修士号(中医学)を取得して卒業、中医師の資格を取得後2014年に帰国。「お母さんと子供を元気にする漢方と養生」の普及のために活動中。