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公開日:2016.02.01 更新日:2020.05.226512view

『病家須知』~江戸版 家庭の医学、いいかげん(加減)な養生のススメ。

古典DE養生 第9巻

江戸時代後期になると、町人や商人が力をつけてきます。程度はあったと思いますが、生活は派手になっていくなかで、健康や養生に対する考え方も変わってきます。

世の人は、長寿の人を見ると、必ず良い養生をしていると知りたくて尋ねる。また、長寿者も養生が良いのでと言うのだが、それは天の恵みであって、生まれながらに虚弱で多病の人や、伝染病で若死にする人を不養生というべきではない。

鈴木朖『養生要論』の一節より


人はそもそも病の器なので、多少の小さな病もなしというわけにはいかないが、大病でなければ無病というべきである。

水野澤齋『養生辨』の一節より

そのような時代に、町医者として庶民の治療に専念した、平野重誠(ひらのじゅうせい)は、病家須知(びょうかすち)を出版します。病家須知とは、病人のいる家では知っておくべきことという意味。

平野重誠が自ら経験したり、患者に対し実際効果のあったものをまとめているので、日々の生活から、自然治癒力を高め、未病を治すための知恵が多く記されています。

まさに、江戸版・家庭の医学書ですね。

第1巻の養生総論には以下のような記述があります。

世間一般に食べられているものを、これは性質がよくない、あれは人には有益であると、病気でもないのに、食べ慣れているものを厳しく制限することはない。倹約に不満のない人は、日々の食事は味が薄いもので満足する。たまにうまいものを食べると特別にうまいと思えるので、日々うまいものを食べ慣れている人よりもおおいに栄養になる。

家業を怠けず励む者は、たまに一日休みをもらい、自分の好きなことを楽しむときには、四六時中歓楽におぼれている者よりも心がのびやかになり、身体にとっておおいに有益である。

たとえば外から来た邪毒は城を囲む敵である。養生に反して起こる病気は、味方でありながら自分にそむく者と同じである。このような謀反の者が城中にいるばあいは、敵に内通して城が奪われてしまう。おそろしいことである。どんな毒をもった敵が城を囲んでも、城中の人びとの心が1つで、兵糧、弓矢、鉄砲があり薬の援護が適切であれば、内外から取り囲んで苦もなく敵を退却させることができる。

『病家須知』「第1巻 養生の心得について」の一節より

完璧な生活を、徹底して毎日行うことはとても難しいことです。養生はバランスが大事!たまには自分へのご褒美も必要ですね。
ただし、毎日ご褒美が続くと、身体から謀反の者が出てきますよ。

鈴木 養平
鈴木 養平 - Youhei Suzuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年宮城県生まれ。東北医科薬科大学卒業後、薬日本堂入社。臨床を経験し、店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”とセミナー講師・雑誌・本の監修(『おうちでできる漢方ごはん』『かんたん・おいしい薬膳レシピ』)で活躍中

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