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公開日:2015.10.01 更新日:2020.05.225510view

『延寿撮要』~未病のうちに、あらかじめ薬を飲んで治療しておくのが“養生者”

古典DE養生 第5巻

私の人生における3大コンプレックスは何だと思いますか?

それは、“健康診断”“外国語”、そして“歯医者”です。
健康診断は、長い息(Vol、2参照)と体重管理で今のところなんとかクリア。
外国語は、ん~っ!これからかな!

そして歯医者は、今年なんと20年ぶりに通ってみたら、その技術の進歩に感激。
今では治療も終わり、日々のケアに取り組んでいます。

この年齢になるまで放っておいた罪悪感、幼い頃の痛かった記憶、気になりながらも遠ざけていた歯医者通い。「行ってみようか」と気持ちを前向きにさせてくれたのは、妻の通っていた歯科医院の先生が、会社近くの歯医者を紹介してくれた事でした。病院へめったに行かない私にとって、信頼の置ける“かかりつけ”を見つけられたことはとてもラッキーでした。

戦国時代から江戸時代になり、徳川幕府にも医療制度が確立されていきます。将軍家康の侍医として招かれ、2代将軍秀忠、3代将軍家光に仕え、83歳の長寿を全うした曲直瀬玄朔(まなせげんさく)は、徳川幕府のまさに“かかりつけ医”でした。
曲直瀬玄朔が32歳のときに刊行した、延寿撮要(えんじゅさつよう)は、古代の『医心方』(Vol、1-2参照)とは異なった、近世ならではの養生心得が記されています。

【養生の3つの要点】
中国伝来の、多数の医学書や本草書に網羅される千言万句(せんげんばんく)を簡略にいうなら、
次の3つに要約できます。

 神気を養うこと
  天地自然に従って行動し、正直であること

 色欲を遠ざけること
  年齢に応じ、性欲を抑えること

 飲食を節制すること
  五味を調え、食い合わせを避け、飲酒や喫茶についても慎むこと

この3つのことは、しごく簡単なのですが、意外に人はこれを守りません。仮に聞き入れても、実生活の上で応用しないのです。

(中省略)

聖人は、まだ乱れていないうちに治めて、すでに乱れてしまったものを治めません。つまり、「未病を治めて、已病(いびょう―すでに病にかかった状態)を治めず」といいます。ひとたび病にかかってしまえば、いかに医療をつくしても、なかなか治らないものです。

未病のうちに、あらかじめ薬を飲んで治療しておくのが“養生者”なのです。

まことに、中年を過ぎたならば、気血を養う薬をつねに服用すべきです。
なお、たって補薬(滋養剤)を好んではなりません。薬というものは、邪気(病のもと)を攻め、病におかされた部分を直すためのものです。生まれながら持ち合わせていないような気力を薬の力でつけようとするのは、風のない日に波を起こすようなものです。

『延寿撮要』「養生之総論」の一節より


薬を使いすぎて、風のない日に波を起こしている人は、いったいどれほどいるでしょうか?
未病の症状があるときは、生活を見直すチャンス!です。生活を振り返り、できる摂生をするだけでいいと思います。プラスマイナスゼロの生活から始めて、皆で養生者をめざしていきましょう!

鈴木 養平
鈴木 養平 - Youhei Suzuki[薬日本堂漢方スクール講師・薬剤師]

1969年宮城県生まれ。東北医科薬科大学卒業後、薬日本堂入社。臨床を経験し、店舗運営、教育、調剤、広報販促に携わる。札幌に勤務中、TVの漢方コーナーにてレギュラー出演。漢方薬による体質改善の指導・研究にあたる一方で、“漢方をより身近に”とセミナー講師・雑誌・本の監修(『おうちでできる漢方ごはん』『かんたん・おいしい薬膳レシピ』)で活躍中

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