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公開日:2014.11.01 更新日:2020.05.2212300view

気功はどうやって始まった?起源と動功「四大気功」

劉梅先生の気功のおはなし④

一般的に「気功」は特殊なものだと思われていますが、実は「元気になりたい」「不調を改善したい」という昔の人の願いからできました。彼らは日常の動作の中で、腕を上げたり、腰を曲げたり伸ばしたり、また痛い部分を揉んだりすることで身体を癒してきました。本当はとてもシンプルな気功の動きは、長い歴史とこういった経験の積み重ねによって奥深さが加わり「神秘的」な印象を与えてしまったと思います。

「気功がいつはじまったのか?」というはっきりとした記録はなく、古墓の中から発掘された物による推測です。約4000年前、中国の中原地域が洪水の氾濫によって湿度が高くなり、沢山の人が関節の腫れやむくみの症状に悩まされることがありました。その時に「舞」(一種の舞踊)を行ったことが古い記録に残されています。この「舞」が気功の雛形といわれています。1973年、中国長沙の馬王堆の古墓から漢代の初期のものとみなされた「導引図」(いまの気功)が発見されました。これは、現在保存されている気功資料の中では一番古い図譜となります。これを見るとラジオ体操に似ているポーズがたくさんありますね。全部で44種類のポーズが描かれていて、ボールを持っている人もいれば、棒を持っている人もいます。服装から見ると民間人だろうと思います。凄いのはそれぞれのポーズに名前と簡単な呼吸法、そして効能までも書いてあることです。

『黄帝内経(こうていだいけい:中国における最も古い医学の書物)』には、気功が治療手段として記載されており、それ以降の気功は道家、儒家、仏教、及び民間に伝承された各種の健康法の中から様々な思想や動き方を吸収し、内容を充実させて発展してきました。例えばいま私は「八段錦」の気功を教えていますが、少林寺の八段錦と道家の八段錦ではやり方が随分違います。また道家のやり方も微妙に違います。
現代の中国でよく知られているのは「五禽戯(ごきんぎ)・六字訣(ろくじけつ)・八段錦(はちだんきん)・易筋経(えききんきょう)」の四大気功です。易筋経以外の各功法は五臓六腑(肝心脾肺腎/胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)や、経絡に関連しているのです。

「五禽戯(ごきんぎ)」
後漢の名医華佗によって、約1800年前に「虎鹿熊猿鳥(鶴とも言われる)」の五種類の動物の動きの特徴をまねて作られました。虎の功法は腎に良く、鹿は肝に、といった具合に、五臓の(腎肝脾心肺)のどれに良いかが明確にされています。

「六字訣(ろくじけつ)」
六字訣は呼吸と発音を通して内臓機能を強化し、整える功法です。発音で元気になるのが不思議だと思いませんか?嘘の発音は肝に良く、呵は心に、など、六文字(嘘呵呼呬吹嘻)の発音によって臟腑(肝心脾肺腎と三焦)にアプローチをかけます。

「八段錦(はちだんきん)」
800年以上の歴史を持つ気功で、八つの動きから成り立っています。一から八の動きと効能が歌や詩のよう書かれているので、読みやすい、覚えやすいという特長もあります。動作がシンプルで学びやすく、また動きは穏やかで、無理なく練習することができます。

「易筋経(えききんきょう)」
達磨大師によって作られたとも言われています。簡単な動作と呼吸に合わせて力を入れたり、力を抜いたりといった動きを繰り返して、強く丈夫な筋肉、関節、骨を作り上げることで身体が鍛えられるのが特徴です。

次回は立って行う静気功「站桩(ジャンジュアン)」についてお話します。この立ち方は疲れにくいので、立ち仕事の方には特におすすめです。日常生活にも役立ちますよ。

リュウ・メイ
劉 梅 – Mei Ryu[中医師]

中国黒龍江省生まれ、黒龍江中医薬大学卒業後、ハルビン医科大学付属二院に内科医として臨床を経験。1994年に来日、北海道大学医学部客員研究員を経て、2001年、薬日本堂に入社。主な著書『中国の女医さんが教えるおいしくて身体にいい中華』『病気・症状を改善 これならできる漢方ごはん』。

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